宇宙旅行サービス見据え
大樹町の北海道スペースポート(HOSPO)で19日、宇宙ベンチャーの岩谷技研(本社・札幌)が気球の打ち上げ実験をした。上空3万mまで飛ばして、地上との長距離通信を検証し、無事に受信できた。詳細は週明けに判明する。8月にも人を乗せて打ち上げて安全性を検証し、将来的には気球に乗って宇宙旅行ができるサービスを展開する。同社の掲げる「誰もが宇宙の入り口に」へ一歩近づいた。(帯広支社・草野健太郎記者)
同社は2016年、個人で宇宙撮影事業を手掛けていた岩谷圭介社長が設立。ヘリウムガスで浮かぶプラスチック気球による有人宇宙旅行の事業化を目指し、これまで実証実験を重ねてきた。
この日、打ち上げた気球には計測装置を搭載。気球の緯度、経度、高度や気圧を地上のノートパソコンで確かめた。インフラを必要とせず、場所を選ばないのが特長だ。
使った気球は天然ゴム製でヘリウムガスを送り込み、地上で直径1m前後まで膨張。上空3万mを目指して打ち上げた。
そのまま風に乗って約83㌔東へ移動。最後には上空で破裂し、釧路市南側の海に着水した。搭載した計測装置は海底に沈み、細かくなった天然ゴムは自然に還るという。
HOSPOを運営するSPACE COTAN(本社・大樹)の担当者は「施設の可能性を感じてもらえた」と手応えを述べた。岩谷社長は「広く、一番早く展開できる場所」と話し、今後は実験の第1候補地として位置付ける。
現在、人が1人搭乗できるキャビンを開発中で、8月にも人を乗せた打ち上げをして安全性を検証する。今後は2人乗り(パイロット1人、乗客1人)の大型キャビンの製作に取り掛かり、将来的に20―30人乗りまで広げたい考えだ。
23年度の商業化を目指していて、想定する旅費は最初期で1人1400万円。20人乗りで1人100万円台を目指す。
打ち上げを終えた岩谷社長は「無事に飛ばせてよかった」と安堵。「地球を見下ろせて、宇宙を見上げることができる。誰もが感動を味わえるサービスにしたい」と話した。いずれ人々を乗せた気球が大樹の空を越える日がやってくるのか、期待が掛かる。