これまで運輸・交通事業者(緑ナンバー)に義務付けられてきた運行前のアルコールチェックが、4月から業務で車両を使う事業者(白ナンバー)に拡大された。現在は〈目視等で確認〉だが、10月からは〈検知器による確認〉が求められる。慣れぬ一手間を煩わしく感じている人も多いのでないか
▼アルコールが検知されるとエンジンがかからなくなる車載装置もあると聞く。いずれ標準装備されるのかもしれない。もし装置が義務化されたとして、その装置の故障中に酒を飲んで車を動かし事故を起こしたら、責任を負うのは故障を見逃した検査者か運転者か。まあ運転者がいくら「故障してなければ運転できなかった。悪いのは俺だけじゃない」と叫んでも、そんな言い訳は通るまい
▼知床沖での観光船沈没で26人もの死者、行方不明者を出した知床遊覧船の桂田精一社長が、14日開かれた道運輸局の聴聞に陳述書を提出。「事故の責任を会社のみとするのはおかしい、国にも責任がある」と主張したそうだ。詳細は分からないものの、言い訳ばかりの社長のこれまでの発言を見るに、国の甘い監督や検査態勢を指摘し、世間の目をそらそうとしたのだろう。ただ、本来は国の関与などなくとも、乗客の命を守るのが運行会社の使命だ
▼もちろん国の検査、監督は見直されるべき。とはいえそれを今回の事故の免罪符にしようなどとは言語道断。いったいどこまで人ごとなのか。今もまだ12人が冷たい海の中に残されている。帰りを待つ家族の心中を思えば、神経を逆なでするような言葉は出ないはずだが。