藤子・F・不二雄さんの漫画『ドラえもん』の中でも名作とうたわれる作品の一つに「おばあちゃんのおもいで」がある。小学生になる前に亡くなったおばあちゃんにもう一度会いたくなったのび太が、タイムマシンで過去へ戻る話だった
▼大きくなった自分を見ても誰か分からないからと、のび太は物陰からおばあちゃんを見守る。すると独り言が聞こえたのだ。「あの子が小学生になるまで生きていられたら…」。未来から会いに来たよと出て行きたいが、おかしな子と怪しまれるかもしれない。のび太はどうしたか。意を決してランドセルを背負い、おばあちゃんの前に立ったのである。おばあちゃんはすぐにのび太だと分かった。ランドセルが二人の思いをつないだのだ
▼ところで小学生を象徴するそのランドセルが今は子どもたちに苦痛を与えているという。重すぎるのである。ランドセル自体の重さは1㎏ちょっとだが、教科書や勉強道具などを入れると5㎏に迫ることもしばしば。通学も楽ではない。成長にも悪いこの朝夕の苦行をなくしたいと、当の小学生が立ち上がった。栃木県日光市の小学生がアイデアを出し、大学生と協力して、引いて運ぶ〈さんぽセル〉を開発したのである。ランドセルを取り付けるキャリーカートのような仕様だ。使い心地は上々らしい
▼ニュースになると大人から「背負って体を鍛えなさい」といった時代遅れの批判も寄せられた。ただ、子どもたちはめげない。首相や文科相にもさんぽセルを寄贈し、問題を共に考えてもらうそうだ。ドラえもんの出る幕はない。