炎症性腸疾患治癒へ研究 カムイファーマの挑戦

2022年07月02日 08時00分

旭川医大発の創薬ベンチャー

 旭川医大で誕生した創薬ベンチャーのカムイファーマは、乳酸菌などに含まれる炎症性腸疾患の治療に有益な成分を使った医薬品などの開発に向け、研究を進めている。炎症性腸疾患に関わる市場は世界で1.5兆円ほどの規模とされ、研究で発見された成分は新たな医薬品として広く活用される可能性を秘める。

創薬の実用化を目指す尾川CEO(右)と藤谷教授

 カムイファーマは2018年に創立。知的財産センター准教授の尾川直樹CEOと、取締役で乳酸菌などの腸内細菌が出す有益な分泌物を用いた治療法の研究を続けてきた藤谷幹浩教授が手を組んで設立した。

 07年に藤谷教授の研究成果を知ったサッポロビールと共同研究を開始。麦芽乳酸菌「SBL88」から分泌する「長鎖ポリリン酸」に炎症性腸疾患の治療に有効な成分があることを発見した。

 炎症性腸疾患は繰り返し下痢や血便などが続く病気で、厚生労働省に難病指定されている。全国で20万人が患っているとされ、安倍晋三元首相も発病したことで知られる。

 現在の薬は炎症を抑える性能で、傷ついた腸管の粘膜を治す作用はなかったため、患者の8割が再発するという。近年は腸内の粘膜治癒を目指す治療薬を模索している。

 藤谷教授が注目する長鎖ポリリン酸は、傷んだ粘膜の修復を促す効果が期待されている。16年に実施した臨床研究では、入院中の10人に長鎖ポリリン酸を投与したところ、患者の7割に有効に作用した。

 乳酸菌飲料にも含まれるラクトバチルス・カゼイ・シロタ株から見つけた「フェリクローム」の有効性も発見。正常な細胞は攻撃することなく腫瘍に働くことから、副作用の少ない抗がん剤として活用できる可能性があるという。

 尾川CEOによると、治療薬の実用化には治験によって薬の効能や副作用の発現など安全性を証明しなければならないが、巨額の費用が必要になるという。「大学の研究費だけでは創薬を実現するのは難しい」と考え、藤谷教授とともに会社の立ち上げを決断した。

 旭川医大が保有する長鎖ポリリン酸やフェリクロームの特許実施権を使う代価として、同大が株式を保有。ベンチャーキャピタルなどの投資を受け、大学内で研究をしている。

 尾川CEOは今後も市場規模は広がると見る。「粘膜治癒に注目した創薬研究は数少ない。実用化できれば需要を一手に引き受けられるかもしれない」と期待を寄せる。

 創薬事業はベンチャーの中でも特にリスクが高いとされるが、藤谷教授は「これまでの研究は医療を変える力を秘めていると信じている」と話す。研究や資金集めをさらに活発化し、事業化を目指す。


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