この歌を聴いているといつも胸を揺さぶられる思いがする。迫力のある声に情景が浮かぶ歌詞。つい引き込まれてしまう。美輪明宏さんが作詞作曲し、自ら歌う『ヨイトマケの唄』(1965年)である
▼「子供の頃に 小学校で ヨイトマケの子供 きたない子供と いじめぬかれて はやされて くやし涙に くれながら 泣いて帰った 道すがら 母ちゃんの働く とこを見た 母ちゃんの働く とこを見た」。少年は慰めてもらおうと土方をしている母親の所へ急ぐが、汗と泥にまみれて必死に働く母親の姿を遠目に見て、自分も負けるものかと学校に戻る。後にエンジニアとなったかつての少年は工事現場で当時を振り返るのだ。「どんなきれいな 唄よりも どんなきれいな 声よりも 僕をはげまし 慰めた 母ちゃんの唄こそ 世界一」
▼少年は母親の仕事を恥じていただろうか。本人に尋ねることはできないが、決してそんなことはなかったろう。むしろ感謝し誇りにさえ感じていたに違いない。就職活動を支援する人気サイト〈就活の教科書〉が「底辺の仕事ランキング」を発表し、その筆頭に土木・建設作業員を置いたと聞き先の歌を思い出した。肉体労働で、誰でもできるのが特徴という
▼この記事を書いた者は誰が自分のいる街やインフラ、建物を作っているか知らないとみえる。汗と泥にまみれて懸命に働く方々を底辺と見るサイトにまともなアドバイスができるのか。批判を受けて記事は削除したようだが、働くことを甘く見てもらっては困る。底辺ではない。縁の下の力持ちだ。