ことし2月、札幌圏に降った大雪の影響で、JR北海道の札幌発着列車が約1週間にわたり運休した。異例の事態といっていい。会社や学校へ通うのに、何で行けばいいか頭を悩ませた人も多かったろう。特定の地域に降った雪により、ほぼ道内全域で利用者の日常の足が奪われたのである
▼広域にネットワークを張り巡らせ、分刻みで効率的に列車を運行させている鉄道の思わぬ弱さが明らかになった出来事だった。米国のサブプライムローン問題が端緒になった2008年の世界金融危機もそうだったが、ネットワークでつながれているゆえにシステム全体が思わぬ脆弱(ぜいじゃく)性を抱えることもある。2日に全国で発生した携帯電話の通話やデータ通信が利用しにくくなるKDDIの障害もその類いだろう
▼ネットワークの保守管理のため機器を交換していたところ、操作の過程でその設備にアクセスが集中。データが渋滞する「輻輳(ふくそう)」が起き、システム全体がダウンしてしまったらしい。きのうの夕方頃まで全面復旧には至らず、月曜日とあって回線を利用している官庁や会社などは連絡調整に追われたようだ。消防や警察への通報にも少なからぬ影響があったと聞く。今や通信はあって当たり前のインフラなだけに突然使えなくなると生命や財産を左右する危機的状況に発展しかねない
▼災害級の大雪も予期せぬデータの輻輳もそうだが、どんな分野でも想定外のことは必ず起こる。ただ、事前に対策を取るのは難しい。便利さの陰に潜む落とし穴である。利用者としても心したい。