更別村がスーパービレッジ構想を推進

2022年07月08日 17時25分

交通機関、医療診療の予約充実実現へ

 人工知能やビッグデータなど最先端技術を活用し、奇跡の農村を目指す更別村。少子高齢化や人材不足が進み、課題が山積している。一方で、このほどスーパービレッジ構想が内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金に採択された。スーパーシティ国家戦略特区指定はかなわなかったが、西山猛村長は「下を向かなかった結果」と話す。最新技術で課題に立ち向かう村の取り組みを追った。(帯広支社・草野 健太郎記者)

 「100歳になってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」と銘打ち、取り組みを推進。2021年4月にスーパーシティ構想案を国に提出したが選定に至らず、村独自にデジタル化を進めてきた。

 デジタル化の背景には少子高齢化がある。15年時点で村の高齢者比率(65歳以上)は29%、15―29歳の若年者比率は13%と少子高齢化が進行。移動手段がなく、買い物や通院など日常生活に支障が出ている。

 交付金事業で、スマートフォンの貸与や公衆無線LANを整備する。西山村長は「必要なのは村全体の変革」と話す。データ連携基盤(都市OS)にさまざまな行政サービスを付加し、連動できる体制を構築する。

 具体策の一つが交通機関、医療診療の予約充実だ。スマホやパソコンで完結できる「更別型ベーシック・インフラサービス」を整備。月額制で自宅と病院間を導線化し、通院負担を軽減する。

 ハード面では宿泊地、分譲地不足が課題となっている。近年は視察目的で来村する企業も多く、滞在や居住環境の整備は不可欠。民間の技術・知識を借りながら、課題解消に向けて取り組む。

宿泊地、分譲地が不足している(更別村提供)

 デジタル化の印象が先行するが、構想の根本には「村民生活充実」がある。空飛ぶクルマやドローン配送など未来図は広がる。しかし、まだ基盤整備の段階で実現までの課題は山積み。西山村長は「デジタル化は一つの手段。一歩ずつ確実に前へ進む」と現状を冷静に見極める。

 「本来、行政は公共サービスのプロであるが、民間との間にある準公共サービスのプロではない」と今野雅裕企画政策課課長補佐は話す。鍵になるのがデジタル人材・技術の集約化。公共と準公共を草分けし、負担軽減や効率化につなげる。

 村はアルファコートで民設民営のサテライトオフィス新設を進めているが、入居企業はすでに満杯。今野課長補佐は「村内で解決できる体制が整えば、サービス向上、活性化につながる」と見通す。

 更別村スーパービレッジ協議会の会長を務める今井母土子氏(長大更別営業所ゼネラル・マネージャー)は「地元企業にメリットがないと意味がない」とする。
 協議会は役場職員や東大教授などを中心に構成。年内に準公共サービスのプロ集団「更別ソーシャルベンチャー」を立ち上げる。村内の仕事を村内企業に限定して発注する。

 今井氏は「村になかった知識・技術を積極的に取り入れる。地元企業が刺激を受けて相乗効果が生まれたら」と意気込む。

 今野課長補佐は「デジタル化自体は村じゃなくてもできる。裏を返せば、更別村でもできる。工夫をしないと未来は暗いままだ」と語る。デジタルを使い、明るい未来をたぐり寄せる。


関連キーワード: ICT まちづくり 医療 地域交通

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • web企画
  • オノデラ
  • 古垣建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,392)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,305)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,304)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (1,114)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,050)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。