丸にも三角にも四角にも見える立体があるのをご存じだろうか。具体的に言うと上から見ると丸、正面からだと四角、横からだと三角に見える。興味のある方はネットで探してみてほしい。種も仕掛けもない、実際に見るとすぐに理解できる形である
▼そんな単純な形でも一瞬だけ見た人が何人か集まれば、「丸だ」「いや三角だよ」「何を言ってる、四角に決まっているじゃないか」と、けんかになるかもしれない。当たり前だが人は自分の見たものを信じる。別の見方もあることにはなかなか気づかないものだ。ダボス会議を運営する国際機関「世界経済フォーラム」が毎年まとめる〈ジェンダーギャップ(男女格差)報告〉もそんな「立体」の一つでないか。日本の順位は驚くほど低い
▼2022年版が先週発表になったが、146カ国中116位とやはり最底辺クラス。マスコミはことしも低順位を大きく伝え、いかに日本が遅れているかをあげつらっていた。ただ、この結果には毎年違和感を禁じ得ない。そこまでひどいだろうか。調べると国連の統計も二つあった。健康と知識、生活水準が指標の〈ジェンダー開発指数〉と、性と生殖に関する健康や労働市場への参加が指標の〈ジェンダー不平等指数〉である。前者は167カ国中55位、後者が162カ国中24位である
▼あら不思議。四角だったのがだんだん丸く見えてきた。先のギャップ報告は女性の政界進出に重きを置いたため順位が低かったのだ。格差是正は着実に進めねばならない日本の課題だが、四角だけを見て騒ぐのはやめた方がいい。