前作から36年後のことし公開された続編映画『トップガン マーヴェリック』(ジョセフ・コシンスキー監督)が大人気と聞き、映画館へ足を運んだ。ならず者国家がひそかに建設する核開発施設を、米海軍が戦闘機で破壊する物語である
▼見ると想像を絶するアクションと息をもつかせぬ展開。前作をしのぐ迫力に文字通り圧倒された。トム・クルーズ扮(ふん)する主人公マーヴェリックの決めぜりふも懐かしい。ファンならよくご存じでないか。その言葉は「考えるな、行動しろ」である。映画の筋から察するに、後先考えずめちゃくちゃ暴れ回れとの意味ではなく、急な危機にもすぐ対応し、行動に移せる技術と胆力を持てという戒めだろう
▼岸田首相にもぜひ教えてあげたい。中国が台湾を脅す傍ら、日本の排他的経済水域(EEZ)内に5発の弾道ミサイルを撃ち込んでからきょうで2週間。日本の管轄域が直接の脅威にさらされたのに、首相はいまだに国家安全保障会議(NSC)を召集していない。北朝鮮がことし3月24日、本道の渡島半島西方約150㌔のEEZ境界付近に弾道ミサイルを落下させたときは、同日すぐ四大臣会合を持ったのにである。中国と北朝鮮、同じ性質の威嚇に対して、首相の態度がどうしてこうも違うのか
▼何かいろいろと考えすぎ、悩みすぎて、迅速に危機対応の行動を取る安全保障の根幹をすっかり忘れてしまったのでないか。映画トップガンのごとく何でも武力に訴えればいいわけではないが、NSCくらいはすぐに開けたろう。中国に対する及び腰が目立つ。