一人親方、収入大幅減も 23年10月からインボイス制度

2022年08月26日 08時00分

課税事業者転換要求など懸念

 2023年10月から消費税の仕入税額控除の新しい方式としてインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入される。買い手側は、原則としてインボイス(適格請求書)の保存が仕入れの要件とされ、インボイスを発行できない免税事業者から仕入れた場合は仕入税額控除が不可能になる。そのため、免税事業者となる中小零細事業者や一人親方は値引きの強要や課税事業者への転換が求められ、大幅な収入減となる懸念がある。(建設・行政部 大坂力記者)

 インボイス制度は現行の区分記載請求書等保存方式に代わり、複数税率に対応したものとして23年10月1日から導入される仕入税額控除の方式。買い手側は原則、インボイスを発行できない免税事業者から仕入れた場合は仕入税額控除ができなくなる。

 そのことから、中小零細事業者や一人親方の免税事業者は、買い手である課税事業者から課税事業者への転換や取引の終了、消費税相当額の値引きの強要を求められる懸念がある。

インボイス制度導入で職人の生活がより厳しくなる懸念がある(写真はイメージ)

 国土交通省はインボイスに関連した取引について、建設業法令遵守ガイドラインに基づきながら注意喚起している。

 課税事業者が取引先の免税事業者に対して「インボイス事業者にならなければ消費税分は払えない。承諾できない場合は今後の取引は考える」という内容で要請したケースでは、要請自体は法律上問題ないが、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げ、それにも応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは独占禁止法上、問題となる恐れがあるとしている。

 一方、道内の建設従事者や職人を組合員としている全国建設労働組合総連合(全建総連)北海道連合会の矢萩毅書記長は「『本来納めるべき消費税を納めるだけの話』と考える人もいるかもしれないが、それは大きな間違い」と指摘する。

 全建総連では一人法人化している組合員が毎年増えているという。その要因として、社会保険加入促進の影響が大きい。雇用契約から一人法人としての契約に切り替えさせ、その会社が社会保険料の支払いを免れる事態が起きている。

 その結果、多くの組合員は個人で社会保険料を負担する上、さらに資材高騰など経済環境の悪化から賃金が目減りしている状況。「厳しい中、免税事業者として何とか食いつないできたというところにインボイス制度が一方的に入ってこられると今までの根幹そのものがおかしい状態になってしまう」と、組合員の経営や生活を危ぶむ。

 また、16年度に改正した所得税法の付則では、事業者の準備状況や事業者取引の影響などを検証し、必要があると認める時に措置を講ずると明記されているが、検証自体がないがしろにされていないか疑問を呈する。

 全建総連は4―5月、年間の課税売上高が1000万円以下で消費税の納税を免除されている一人親方を対象にアンケートを実施。23年10月からインボイス制度が導入されていることについては「大体は知っている」「少しは知っている」が7割を占めた。一方、普段取引している上位企業から制度開始後に消費税を納める課税事業者になるよう求められる可能性については「知らない」との回答が40.3%。制度の詳細や導入による影響などの認識が広まっていない。

 矢萩書記長は「多くの対象者がよく分かっていないのに来年10月からスタートするのはあまりにも乱暴なのではないか」と訴える。

 全建総連は、インボイス制度について免税事業者が排除されない工夫を求め、それが困難ならば施行を延期するよう関係機関や国会議員に要望活動を展開している。道連合会は、その上で施行に備えて制度の詳細や対処に関する説明会を開くほか、動画を配信し組合員への周知を図っている。

 矢萩書記長は「一定程度周知し、現状を理解した上で検討してほしい。もっと底辺の人の声をくみ上げて考えるべきではないか」と話している。


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