電力自由化の今

2022年09月02日 09時00分

 自由という言葉には、どこか心引かれるものがある。小説家国木田独歩も「自由は飲んで尽くることなき希望の泉を予想せしむ」と言ったとか。束縛を受けず、伸び伸びとした状態を思い描くからだろうか

 ▼ただ自由といってもいろいろある。思想や言論の自由のような政治的なものから、貿易や価格といった経済的なものまで。特に戦後は自由化といえば物やサービスの値下げを意味した。心引かれないわけがない。自由化は経済のグローバル化が招いた自然の成り行き。多くの場合、競争原理が働き市場の活性化にもつながった。もちろん消費者も得になることなら、もろ手を挙げ大歓迎である。ところが元々の制度設計に無理があると、自由の裏に隠されていた現実が突然牙をむく

 ▼電力自由化を機に導入された格安の「自由料金」が、従来型の「規制料金」より高くなる可能性が出てきたのである。北海道電力が、燃料費の上昇分を料金に転嫁できる上限を廃止すると発表した。ことし12月分から適用する。これまで上限を超えた分は電力会社の持ち出しだった。これ以上燃料費の高騰が続くと、経営が傾きかねない。この際、利用者に負担願おうというのだ。自由料金の自由とは価格変動の自由だったわけ

 ▼自前の発電設備を持たずに市場から電力を仕入れていた新電力も、昨今の卸価格高騰で相次ぎ経営難に陥っている。自由化により電力を市場原理に任せた結果、今や本来旨とすべき安定供給に必要なはずの責任は曖昧だ。「自由とは責任を意味する」。作家バーナード・ショーの言葉が重く響く。


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