公共施設などでは関連インフラ整備が進む
カーボンニュートラル実現の一手段として注目される電気自動車(EV)。普及の鍵になるのは関連インフラの整備だ。十勝管内では道の駅など公共施設に充電設備の設置が進む。一方で、自動車業界からは「EVの特性である『自宅で充電』が主流にならなければ、本格的な普及は遠い」との指摘がある。ゼネコンや住宅メーカーに話を聞くと、十勝管内と札幌圏で温度差があった。(帯広支社・草野健太郎記者)

道の駅おとふけに設置されている充電設備。住宅まで普及するかが鍵になる
政府は2030年までに温室効果ガス排出を13年比で46%削減を掲げる。手段の一つが次世代自動車だ。このうち、EVはガソリンを使わず電気で走るため二酸化炭素の排出を抑える。
3月時点で、ナンバー別に見ると普及率の道内トップは帯広の0.1%、保有台数は札幌で1163台だった。充電設備数を振興局別に見ると石狩管内が186基で最多。十勝は42基で5番目に多い。
設備さえ整えば自宅で充電できるのがEVの売り。十勝総合局と民間企業7社で構成する次世代自動車研究会では、普及へ取り組みを進める。6月の会合で帯広日産自動車(本社・帯広)の村松一樹社長は「公共施設への整備も必要だが、家での充電を前提にすべきだ」と訴えた。
しかし、十勝管内と札幌圏の業者では考えが分かれる。十勝管内のハウスメーカーは「ユーザーからEV充電設備の設置希望は聞かない。そもそもの数が少ない」と話す。ただ、災害時の備えとなる蓄電池としての側面には高い可能性を感じている。「ブラックアウトを経験した人間として、会社にあると心強い。しかし、個人では運転が中心になる。充電設備が少ない現状、普及に時間を要するのでは」と見解を示した。
十勝管内の総合建設業者は「脱炭素化に向けた動きは確かにある。ただ、個人住宅に充電設備が普及している実感はない」という。
一方で、札幌市内でマンション開発を進めるデベロッパーは「来客用駐車場への設置を数年前から進めていたが、近年は今後の普及を見据え、住民駐車場にも増やしている。既存のマンションでは住民らの声で設置するケースが見受けられる」という。
戸建ての建て売り事業者は「数年前から充電設備を標準装備で付けている。コストは数万円で、ないよりはあった方が良いと感じた」と話す。背景には、保有台数や事業者の意識向上などがある。
公共建築物では十勝管内でも設置が進む。宮坂建設工業(本社・帯広)の阿部浩之副社長建築担当は「ホテルなど第三者利用を目的とした施設には少しずつ増えている」とみる。
車利用が多い道の駅では、管内16カ所のうち10カ所で設置済み。4月に開業した道の駅おとふけは、2台分の急速充電設備を設ける。音更町経済部産業連携課の月居謙介課長は「世間の流れもあって、当初計画に盛り込んだ」と話す。次世代自動車振興センターの補助金を活用し、設備費921万円のうち約3分の1をカバーした。
政府が削減目標を掲げる30年まで残り8年。EVの本格的な普及に向け、個人への意識醸成が急務だ。