ブランド力が追い風 小樽への食品企業誘致や工場開発活況

2022年09月14日 08時00分

同業種集積で相乗効果期待

銭函側の石狩湾新港地域では食品関連の企業集積が進む

 食品関連事業者を中心に小樽市の企業誘致や工場・物流施設開発が活況だ。石狩湾新港地域内の銭函エリアが中心で、札幌市へのアクセス性のほか同業種の集積による相乗効果を期待する声が多い。さらに食品製造業にとって「製造地・小樽」というブランド力は強力な追い風となっている。(経済産業部・宮崎嵩大、小樽支社・富樫茜記者)

 2021年度の小樽市企業立地状況を見ると、新規立地が7社、工場増設などのための既立地企業の用地取得などが6社、工場などの操業開始11社だった。

 札幌市内へのアクセス性に優れた石狩湾新港地域(銭函4丁目、5丁目)での立地が好調で、21年度に操業開始した加工野菜の製造販売を担う大果(本社・小樽)の工場など食品関係の企業集積が進む。

 小樽市産業港湾部の由井卓也主幹は「銭函側に東洋水産や伊藤ハムデイリーなど食品関係の事業所が集まっている。各社は相乗効果を見込んでいるのでは」とみる。

 外食や給食などへの食材卸売り、小売店舗キャロットの運営などを手掛ける大槻食材(本社・函館)も新規立地した企業の一つ。ことし2月に物流センターを完成させ、23年3月の本稼働を目指して準備を進めている。物流センターを拠点に他社との共同配送も構想。担当者は「高騰する配送コストに対応するため、同じエリアにある同業者と協力できれば」と期待している。

 全国的な知名度を誇る「小樽」ブランドも強みだ。銭函に立地する食品製造業数社は、小樽で製造したことを全面的に打ち出した商品を展開している。市とパートナーシップ協定を結ぶ東洋水産は「小樽あんかけ焼そば」を販売。同社の担当者は「地域振興の一助になればと思い、販売している。売れ行きは良い」と明かす。

 今春からは各企業のニーズに合わせ、石狩開発(本社・石狩)が銭函4丁目の16haを分譲開始した。食品関係を含む3社の進出が決まっていて、市は今後も食品関係の誘致を積極的に進める考えだ。

 小樽を新たな事業拠点に選ぶ企業の多くは、札幌市からやってくる。21年度の新規立地企業7社のうち4社が札幌市だ。特に従業員の通勤利便性に大きな変化が生じない西区、北区、手稲区の工場や事業所が進出に興味を示すケースが多い。小樽市としては、元々あった札幌市内の拠点周辺に住宅が張り付き、事業継続や改築が難しくなった企業へのアピールを続ける。

 石狩湾新港地域以外にも、銭函ICに近い銭函工業団地(銭函3丁目)がある。分譲地は少ないもののJR銭函駅、ほしみ駅が近く、通勤の便が良い。小樽港や高速道路を活用したい企業から立地に関する問い合わせが届いている。

 かつて〝東洋一の製缶工場〟と言われた北海製缶の関係から、市内には「優れた技術を持つ老舗金属加工事業者も多い」(由井主幹)といい、同業種に関連した企業の集積も期待できる。

 市は、それぞれの企業ニーズに沿った提案で誘致に結び付けながら産業振興を目指す姿勢だ。


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