仮想空間で「思い」伝える 土木向けにゲームエンジン活用

2022年09月26日 08時00分

CIMとデザイン融合 高品質な完成イメージ

 デザイン会社のKOO(クウ、本社・小樽)は、土木分野でゲームエンジンを使った仮想空間の提案に乗り出した。地形データや建設物モデルを組み合わせ、高品質な3Dのデジタル空間を構築。映像や音楽制作で培ったデザイン力を生かし、表現力の高い完成イメージやシミュレーションの提供で注目されている。

 ニトリホールディングス出資で小樽商工会議所が取り組むオタモイ開発構想に採用された。土木現場では、イメージしやすい現場資料づくりで相談が増えている。

オタモイ開発構想の完成予想図(=仮想空間を切り取ったもの)

 仮想空間の構築にはゲームエンジン技術を使った空間表現ツール「ツインモーション」を採用した。ドローンや360度カメラ、レーザー計測でスキャンした現実の地形に建設物などの仮想モデルを置き、用途に合わせ空間イメージをデザインする。

 空間内は視点を自由に変えて動き回ることができ、音楽を加えた動画編集も可能だ。人や車の視点、日中や夜間の見え方など条件設定により、施設配置や安全対策のシミュレーションに役立つ。

 オタモイのイメージ図は現実地形のスキャンデータを使い、デザインした空間を切り取った。関係者には、ニトリのCMテーマをアレンジした音楽をバックに軽快にカメラが動き回る動画で魅力を伝え、好評を得た。

 建設分野では、BIM/CIMの普及を背景に、その3Dデータを仮想現実(VR)やメタバースなど仮想空間へ応用するニーズが高まっている。

 しかし、精度が問われる設計や施工用ツールは視点を動かすたび全ての物体を再計算するため処理が重く、表現力を犠牲にしがちだった。

 そこで注目されているのがゲームエンジンだ。コンピューターゲームの制作を効率化する共通プログラムで、舞台の3D空間はプレーヤー視点に合わせ周囲のみを描写することでリアルさを保ちながら表現力や処理速度を確保する。

 この技術を応用したツールの登場で活用の幅が広がっている。土木分野では国土交通省九州地方整備局が昨年、河川整備の住民合意形成にゲームエンジンを使ったVR空間を採用。手法をCIM標準化案に提案している。

 KOOは、こうした動きに着目。中村友社長は「建設業はクリエーティブな分野。表現には、まだまだ工夫の余地がある。仮想空間で『思い』を伝えるイメージを提供したい」と話し、CIMとデザインを融合した空間提案を強化する。

オタモイ構想の動画を説明する中村社長

 制作費は1現場50万円から300万円。10月には土木技術者向けにツール活用セミナーの開催を計画している。


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