担い手確保や働き方改革にも
鈴木商会(本社・札幌)は、金属リサイクルの事業所で使う重機向け遠隔操作システムをコベルコ建機と共同検証中だ。人口減少や高齢者増加で地方を中心にオペレーターの確保が将来難しくなると考え、大都市の札幌圏と過疎の地方を通信ネットワークによる遠隔操作で結ぶことで、担い手確保や働き方改革の課題解決を図る。年度内の現場実装を目指している。
技術はコベルコ建機の建設現場テレワークシステム「K―DIVE CONCEPT」を基本とする。通信ネットワークを介した建機の遠隔操作システムで、2021年の実証実験では札幌―広島間の総距離1800kmを遠隔操作できたほか、札幌―帯広間の300kmと切り替えて作業することにも成功した。
鈴木商会は、人口減少や高齢者増加で重機オペレーターの確保が次第に難しくなると想定し、遠隔操作システムの導入を検討することとした。将来的には、札幌本社にコックピット室を設けながら地方の各事業所と通信ネットワークで結び、配置する重機を遠隔操作しながら資源リサイクルの処理などを進めたい考えだ。
実稼働に向け、苫小牧事業所にコックピット室と専用重機を置き、近距離の遠隔操作を試験運用している。重機はSK350Dをベースとする切断機で、Wi―Fiアンテナ2本を介して基地局から100m以内を無人で動く。
重機のキャビン左上と両側面、足元、後方には合計5個のカメラが付き、映像をコックピット室モニターにリアルタイムに送る。遠隔ショベルを安全運用するためキャビン上部に赤、黄、緑色のランプを取り付け、通信確立や安全レバー解除などの状態を外から目視できるようにしている。
コックピット室にはモニター7枚と運転席を設置し、実機と同様に重機の運転免許を持つ人のみ操作することができ、登録者を顔認証することで稼働する。運転席下にはシリンダーを配置していて、重機の傾きに合わせて動くことにより操作感を補い、作業性や安全性を確保する。
プロジェクトを統括する加藤弥情報システム部長は「基本的な性能は確立した。まずは苫小牧で運用して春先まで効果を検証しながら次の展開を考えたい」と説明する。
駒谷僚社長は「遠隔操作システムを使いこなし、人が集まらなくても処理できる作業環境をつくりたい。担い手確保に悩む道内外の事業者に技術を役立ててもらえるよう、コベルコ建機と試行錯誤したい」と話している。