リアルな建設業伝える
建設業界を知り、少しでも興味を持ってもらいたい―。建築を主力とするカツイ(本社・岩見沢)の管理部業務課長である荻野諒介さんは、美唄尚栄高で民間企業の講師として、建設業の現場や施工技術などをテーマに、1カ月間にわたり授業を担当した。自ら試行錯誤しながら18時間のカリキュラムを構築。現場体験などを通して、リアルな建設業の仕事を伝えている。
同校では生徒の職業観の醸成などを目的に、ことしから民間企業の講師を招き授業を実施。同社は、インターンシップの受け入れなど以前から同校と交流があったことが縁で、工業系列選択科目「3年次課題研究建築実習」の授業の依頼を引き受けた。
工業科建築コースの3年生が対象で、期間は9月22日―10月27日。荻野さんは、日常業務と並行しながら、全6回18時間の授業を担当。カリキュラムは10時間かけて作り上げた。
「座学だと民間講師を導入するメリットはない」と思い、機材を使ったフィールドワークや現場見学会など体験型の講習をメインにした。建設業の仕事内容やCADの説明から始まり、CADの操作技術や応用、ドローンの役割、レベル、光波を使った現場の測量など、安全講習と現場見学を盛り込みながら授業を進めた。
10月20日の2回目の現場見学には、15人の生徒と松坂徹教諭が参加。同社が施工を請け負う岩見沢市発注の美園小屋上防水など改修の現場で、工事概要の説明をし、外壁塗装や屋根板金前の防水施工などを見学してもらった。敷地内でレベル測定の実習もした。松坂教諭は「今の子たちは体験することで興味を持つ。事前に授業してから実際に体験すると吸収しやすい」と話す。
荻野さんは授業を通して「若者はやはり建設業の仕事にあまり情報を持っていない」と気付き、「働き方や働いている人の雰囲気を見たり、普段の仕事内容などを体験できる場は重要」と実感したという。
荻野さんは入社10年目の33歳。現場や積算、採用など幅広い業務を担当。父親が土木系の仕事をしていたため、なじみのある建設業を選んだ。
現代の若者については「働き方に対する意識が非常に強い」と指摘。公共工事の週休2日制の積極的な導入は「多くの若者が待ち望んできたこと」とし、「建設業が大きく変化していることをアピールできれば、業界のイメージは180度変わる」と強調する。
人材育成については「現場の中で手間暇かけた教育をするのは必須。新規人材育成のためにも、週休2日制や余裕ある工期設定、書類の簡素化など、行政を含めた現場運営の適正化を進めてもらえたら」と話している。
荻野さんは12月、今度は同校2年生を対象に4日間の授業を担当する予定。仕事のイメージがつかみやすく、実際に働く人に触れられるよう、現場や工場などの見学を検討し、カリキュラムを練っている。