経済界から再開発提案も
2023年1月に閉店する藤丸百貨店の衝撃は大きく、地元経済界は揺れている。帯広市中心部の空洞化で思い返されるのは、1998年のイトーヨーカドー帯広店移転だ。空き店舗は約20年にわたって所有者が二転三転し、さまざまな計画が立ち消えになった。行政との連携は不可欠だが、雇用対策以外で目立った動きはない。課題山積の中、迅速な判断が求められる。地元や専門家の声をまとめた。
帯広市内では近年、郊外に商業施設や飲食店が出店傾向にある。近隣の音更町では国道246号沿いに多くの民間企業が進出。不動産評価コンサルタント(本社・帯広)の合田修社長は「商業施設分散化が藤丸の集客に影響した」とみる。
藤丸に隣接する広小路商店街も危機感を募らせる。振興組合の吉田克司理事長は、イトーヨーカドー帯広店移転の影響を指摘。「従業員が通勤時に立ち寄ることもあり、人流創出に貢献していた。藤丸閉店で追い打ちをかけられる」と漏らす。

広小路商店街も危機を募らせる
帯広商工会議所の川田章博会頭は「北見市や釧路市まで商圏を広げることが重要。しっかりサポートする」と意気込む。
周辺一帯を巻き込んだ再開発を期待する声も一定数ある。吉田理事長は「広小路を巻き込んでほしい」と願う。帯広商工会議所のまちなか未来会議は8月、商店街活性化に向けて費用回収可能な高層建物への建て替えを提言した。村松一樹座長は「ゼネコンが興味を抱くのではないか」と期待する。
再開発には相当な費用と時間を要するが、あるデベロッパーの担当者は「道内で再開発をするなら、札幌か帯広」とみる。「産業基盤が強固な帯広市内中心部には繁華街のにぎわいもあり、お金やテナントの動きが活発」と前向きな姿勢だ。
行政との連携は不可欠だが、344人の離職者が発生する可能性があるため雇用対策を優先。帯広公共職業安定所の三上元彦所長は「失業期間を限りなくゼロに近づけることが重要」と説く。
帯広市の米沢則寿市長も「関連先と共同で取り組んでいる」と話す。閉店後のまちづくりについては触れていないが「ビル活用の動きも出ていると聞く」とする。
専門家の目はどうか。百貨店経営に詳しい日本経済大経営学科の西村尚純教授は、スピード感の重要性を訴える。時間をかけすぎると周辺環境の変化などで選択肢に影響が出る。「3年以内に何かしらの動きがないと厳しい」と言い切る。再開発については「魅力的だが、時間がかかりすぎる」と話す。
藤丸周辺には金融機関と店舗が点在し商業とビジネスが入り組む。西村教授はマンションと商業施設を掛け合わせた複合化に好意的な見方を示す。「低層階をスタートアップ企業が集まるエリアにしても面白い」とする。
街の象徴とも言える中心部の空洞化は、地域経済の失速を印象付ける。過去を繰り返してはならない。