ギリシャ神話の中でもひときわ有名な男神といえば、太陽神アポロンだろう。完璧に美しい青年の容貌を持ち、太陽の戦車に乗って天空を縦横無尽に駆け巡ったという
▼その言い伝えから命名されたのが、1960年に始まった米国のアポロ計画である。69年の月面着陸成功が印象深い。なぜ月なのにアポロ(太陽)だったのか。実は当初計画は有人宇宙飛行のみで、月着陸は後から付け足されたものだからだそうだ。そこへいくと今度の計画は分かりやすい。人類が再び月を目指す米航空宇宙局(NASA)の国際プロジェクト「アルテミス計画」である。アルテミスはアポロの双子の姉で月の女神だ。カプセル型宇宙船「オリオン」を搭載した「SLS」ロケットが16日、ケネディ宇宙センターから打ち上げられた
▼行き先は前と同じ月だが、実現目標は格段に高い。月軌道上に「ゲートウェイ」と呼ばれる宇宙ステーションを建設し、そこを拠点に月面で数週間程度滞在できる環境を整えようというのである。先日始まった第1弾では主に調査と試験を実施。第2弾から有人飛行に移行し、第3弾で飛行士が月面に降り立つ。月に立つのは最短で2025年、ゲートウェイ完成は28年だからそれほど遠い話でもない
▼日本も今第1弾から参加している。月面に着陸してデータを集める探査機「OMOTENASHI」で、既にSLSから分離され月に向かっているという。成功すると日本初の月面到達となる。予定だとちょうどきょうが着陸の日なのだが、さて、アルテミスはほほ笑んでくれるのかどうか。