はた目からは少しの悩みもなく能天気に毎日を過ごしているように見えても、実は心の中で嵐が吹き荒れている。若いころとはそういうものだろう
▼佐藤多佳子さんの小説『明るい夜に出かけて』(新潮文庫)にも主人公の青年がこう自問する一節があった。「自分を変えたいかな? どのへんを変えたいかな? ちゃんとしたいって気持ちはあるんだ。でも、どこに向かって〈ちゃんとする〉のか、よくわかんね」。青年は20歳。ある事情で大学を休学し、コンビニでバイトをしながら自分の歩むべき道を模索している。20歳といっても実際は大学や専門学校に通っている人、既に就職している人、フリーターの人、いろいろな人がいよう。ただ、試行錯誤を繰り返し、自分の歩むべき道を探しているところは同じでないか
▼「成人の日の眼の澄みや機械工」野村喜舟。きのうは成人の日だった。昨年春の改正民法施行で成人年齢は18歳になったが、この年代の若者が置かれている状況や思いに変わりはあるまい。総務省統計局によると、ことし1月1日現在の新成人は341万人。例年に比べかなり多いのは、対象年齢引き下げの過渡期のためだ。今回は18歳の112万人、19歳の113万人、20歳の117万人を合算している
▼全体では多く見えても、個別に見るとどの年齢も総人口の1%を切っているのが現状という。少子化の影響が色濃く出ている。岸田首相は最近、「異次元の少子化対策」を打ち出したが、掛け声だけで終わらせてはいけない。道を切り開く若者がいなければ日本の未来はないのだ。