処理水

2023年01月20日 09時00分

 物理現象の中には、直感に反する動きを見せるものがある。例えば真空中で鉄球と鳥の羽を同じ高さから同時に落とすと、どちらが先に着地するか

 ▼ほとんどの人は答えをご存じだろう。正解は同時。空気抵抗がないため、両物体の落下速度は等しい。ただ知識として知ってはいても、内心疑問に感じている人も多いのでないか。鉄球と羽が同時に落ちるなど通常は想像できない。だまされているような気にもなろう。先の現象がなぜ事実だと分かるかといえば、実験によって証明できるからである。早野龍五東大名誉教授も『「科学的」は武器になる』(新潮社)に、「科学的に考えること」は「物事の基本に立ち返り、行くべき道を照らしだす羅針盤になってくれる」と記していた

 ▼直感や思い込みで水掛け論をしていても答えが出ることはない。そんなとき役に立つのが科学というわけ。東京電力福島第1原子力発電所の処理水についても同じである。政府が春から夏ごろをめどに海洋放出する方針を固めた。いまだに危険な汚染水と呼び放出に反対する者もいるが、ここは思い込みを排したい。処理水は放射性物質を検出限界値以下まで取り除き、残るトリチウムも1㍑当たり1500ベクレル未満にして放出する。複数機関の検査で信頼性は高い

 ▼人体にも常に7900ベクレルの放射性物質がある。それで健康に問題はないのだ。海で薄まるトリチウムが生物に悪さをする心配もない。これを汚染水と呼ぶのは真空中でも鉄球が先に落ちると主張して譲らないようなもの。羅針盤をよく見た方がいい。


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