備えあれば憂いなしというが、想定を大きく超える出来事が起きるとせっかくの備えも追い付かないことがある。10年に一度といわれる今回の大寒波でも全国各地で車が立ち往生した。渋滞で丸1日近く車内で過ごした人もいたようだ
▼命に関わる危険があるとの気象情報を聞かされ、多くの人がある程度用心をしていたはず。ただ、短時間にこれだけ大量の雪が降ったのでは、多少の備えがあってもお手上げである。雪に慣れた本道なら同じ条件でもここまでの事態にはなるまい。インフラや除雪体制、人の意識が克雪に最適化されているからである。とはいえ一部のインフラに関しては心配もないではない。暫定2車線の高速道路の話である
▼中でも道東道は心臓に悪い。23日には香港の観光客が穂別町長和のトンネルで対向車線の壁に激突。24日にも夕張市の橋でライトバンが対向車線に飛び出し、大型バスと正面衝突した。中央の分離はポールとワイヤのみ。何かあると簡単に対向車線へ飛び出してしまう。通常の4車線なら構造的に防げた事故が、暫定2車線では防げない。事実、国土交通省が高速道路6社の路線を調べたところ、2016年に事故などで通行止めになった時間は道東道占冠―トマム間が全国ワースト1だった
▼同年8月の台風に伴う豪雨で274号日勝峠が崩落し、1年余りの全面通行止めを強いられたとき、道東道が東西を結ぶ生命線となったのは記憶に新しい。物流に観光に生活にと、道東道の役目は今ますます重い。危険は十分に想定できているのだ。備えを急いだ方がいい。