企業課題解決と学生提案、初の成果
札幌商工会議所、北海道ニュービジネス協議会など道内4経済団体が取り組む企業課題と学生提案のマッチングが初めて実現しようとしている。技能継承課題の打開策を募った札幌ボデー工業(本社・札幌)に、北海道情報大の学生チームがグーグル社のサービスで手軽にマニュアル動画サイトを作れる手法を提案。両者で構築したプラットフォームが近く完成する。

学生の支援で企業課題を解決させるツールを構築した
札幌ボデー工業は、特殊車両の製造を手掛ける。新卒者を毎年複数人採用するが、増える若手へ技能を継承する仕組みに頭を悩ませていた。若者が慣れ親しむ動画でマニュアルを作ろうと思い立ったが、映像制作会社に発注すると費用が高額。手軽に編集可能なシステムで動画マニュアルのプラットフォームを構築できないか検討していた。
札商などは学生アイデアを企業とマッチングさせ製品・事業化を支援する取り組みを18年度に開始し、21年度には企業課題解決コースを新設。同社は札商の勧めで昨年7月から解決策を募集した。
名乗りを上げたのは、道情報大情報メディア学部3、4年3人による学生チーム。マニュアル動画の仕組みを社内システムに組み込むと費用が高くなるため、グーグル社の無料ウェブサイト構築サービス「グーグルサイト」を提案した。用意されたデザインから選ぶため専門知識がなくても直感的動作で作成できる。堀田和宏社長は「動画をいつでも見られる環境づくりにハードルがあったが、情報大はその分野にたけている」と期待を寄せ、11月半ばにプロジェクトを開始した。
集中力を失わず学べるよう、動画は長くても3分にまとめた。撮影したのは3人の新入社員。「動画作りで復習になった」「接点の少ない上司とコミュニケーションが取れた」「社員によってやり方が違うことを発見した」と振り返る。
機械に操作手順があっても作業全体の流れは各社員の自己流になりがちで、先輩社員もよりよい手法を学べるツールになる。札幌ボデー工業の田代正幸ものづくり部長は「動画にすることで効率よくできる人を見本にし、より生産性を極める方法を身に付けるベースになる」と話す。
動画は工程の種類ごとに分けてサイトに載せ、Q&Aコーナーも設置。質問を書き込むと詳しい社員が回答するもので、若手から「これなら質問しやすい」と好評だ。質問と回答が蓄積されることでマニュアルの厚みが増す。サイトは2月末の完成を予定している。
学生チームにはゼミの一環として情報大で単位認定される。3年の小山隼也さんは「自分の得意分野が役立ち、やりがいを感じた」と話し、「動画で社会の手助けができれば」と将来の目標への思いを強くした。
今回の成果に関しニュービジネス協議会の工藤仁常務理事は「素直にうれしく、ぜひ実現を」とエールを送った。