道内は全用途で7年連続上昇 23年1月1日時点公示地価

2023年03月24日 08時00分

住宅地と商業地、全国10位を独占 札幌近郊「KIECE」けん引

 国土交通省は22日、2023年1月1日時点の公示地価を発表した。道内全用途の平均変動率はプラス6.8%となり、7年連続で上昇した。用途別の変動率は、住宅地が7.6%、商業地が4.9%、工業地が4.7%それぞれ伸びている。住宅地と商業地で変動率1位から10位までを北広島市など札幌近郊5市の「KIECE」が占め、全国の上昇率10位までも独占した。札幌に収まりきらない住宅需要が近郊全体の地価上昇をけん引したことに加え、北海道ボールパークFビレッジが開業する北広島市が最も伸びた。人口10万人以上の都市では、釧路市の住宅地が32年ぶり、旭川市の商業地が3年ぶりに上昇に転じるなど動きがあった。(8―10面に一覧、2、4、17、18、19、20面に関連記事)

北広島市のFビレッジ。野球が観戦できるマンションなど周辺開発も進む

 23年の道内調査地点数(標準地)は99市町、1367地点。全国の全用途平均変動率は1.6%だった。22年比の平均変動率の伸び幅は944地点の住宅地が3ポイント、366地点の商業地が2.4ポイント、55地点の工業地が2.3ポイントといずれも大きく伸びた。商業地は8年連続、住宅地と工業地は5年連続でアップした。

 商業地で前年から継続している標準地363地点のうち191地点で地価が上昇した。

 上昇率上位を見ると、トップは22年に続き北広島市栄町1丁目1の3で、28.4%伸びた。2位も前年と同じ北広島市中央2丁目1の2となった。

 北広島市では、JR北広島駅西口でFビレッジの開業に絡んだ再開発が進み、ホテルなどが入る複合交流拠点施設が建設中。周辺も事業用地としての需要が期待される。共同住宅用地としての需要も堅調なことから容積率が再評価される傾向にあり、背後住宅地の地価上昇も手伝い、相場が強含みの状況が続いている。

 3位も前年と同じ恵庭市緑町2丁目77、前年6位の江別市元江別873の19ほかは4位に入り、5位の江別市上江別西町42の6ほかは前年19位から大きく順位を上げた。10位まで札幌近郊市の地点が続くが、地価上昇の要因は元値が低いことと、周囲の住宅地との価格差が縮まったことにより住宅用地として買われるケースの増加がある。

 市町ごとの商業地の変動率を見ると、札幌市が9.7%と10年連続で上昇。新型コロナウイルスの流行対策だった行動制限が緩和されつつあり、経済活動が回復傾向となっていることから全区で上昇幅が拡大した。北広島市はプラス26.7%、恵庭市は21.3%と軒並み大きく上昇している。千歳市はプラス18.7%と既に伸びているが、今後建設が計画されているラピダス(東京)の半導体工場効果により、数年かけさらに伸びる可能性がある。コロナ禍前は勢いがあった倶知安町はプラス3.2%と比較的落ち着いている。

 商業地の道内最高価格は札幌市中央区北4条西4丁目1の7ほかで、1m²当たり605万円だった。22年から48万円、8.6%伸びた。上位10地点に入ったのは全て札幌中央か北の地点で、22年度から順位に変動はなかった。

 住宅地は22年から調査を継続した939地点のうち533地点で上昇した。上昇した標準地は34地点増えた。

 上昇率1位は22年に続き北広島市共栄町1丁目10の3で、30%増の1m²当たり5万9800円になった。この他4位までが北広島市内の地点だった。10位までは江別、恵庭を含めた3市で独占し、全国の変動率1位から10位もこれらの地点が占めた。

 札幌周辺の住宅地価上昇の根底には、札幌市内でいまだに旺盛な住宅需要がある。札幌市内で受け止めきれない需要がもともと価格が低い周辺市にあふれ、価格を引き上げている。

 1位から4位までの北広島市の地点は、いずれも29%以上の大幅な伸びとなった。札幌の地価上昇の波及効果に加え、ことし開業するFビレッジによる雇用増と定住人口増加により住宅地の需給は逼迫(ひっぱく)している。

 市ごとの住宅地の伸び率を見ると、札幌市が15%で10年連続の上昇を果たした。全区で22年を上回る伸び幅で、地価が高い中央区に比べて相対的に割安感がある厚別区、白石区などの地下鉄駅徒歩圏に用地需要が流れている。千歳市は22.5%と伸長。千歳駅周辺から市街地全体へと地価上昇が広がった。恵庭市は26.4%伸びた。札幌市、千歳市の両方から影響を受け、住宅需給が逼迫しつつあることから従来の不人気地区まで地価の上昇が広がっている。江別市が27.5%、帯広市が9.8%、苫小牧市が1.5%などとなっている。

 住宅地の最高価格は22年と変わらず札幌市中央区南1条西26丁目185の5で、1m²当たり70万円となった。上位10地点は全て札幌市内となっている。

 一方、下落したのは住宅地が236地点で22年より42地点減った。商業地は106地点で22地点減。下落率が最も大きいのは、住宅地が奈井江町奈井江575の83でマイナス7%、全国でも1位の下落幅だった。商業地はむかわ町美幸2丁目20ほかでマイナス6.7%だった。同地点は全国でも2位の下落率だった。人口流出や高齢化、地域経済の衰退などが要因とみられる。

関連記事

 北海道建設新聞2023年3月23日付8―10面には、各地点の公示地価一覧が掲載されています。また、2、4、17―20面には関連記事が掲載されています。閲覧は新聞本紙やe-kensinプラスの記事検索コーナーをご覧ください。


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