ネットを眺めていたら、大切にしていた年代物の人形類を妻に全て捨てられて嘆く夫の話が出てきた。猛然と抗議する夫に妻はこう言い放ったそうだ。「ガラクタばっかりじゃない」。ある人のごみは別の人の宝とはよく言ったものである
▼落語の「道具屋」もそれと似たところがあった。どんな仕事も長続きしない与太郎に、伯父が道具屋をやらせるのである。元手がない与太郎に伯父は道具の入ったこうりを渡す。中を見ると鼻の欠けたひな人形やぼろぼろにさびたのこぎり、古ぼけた股引などごみだらけ。与太郎もさすがに文句を言うが、伯父はこんな物でも売れると保障するのである。いざ道端で商売を始めてみると、実際買っていく人がいるのだった
▼いわゆる「ごみ屋敷」の住人も、家に山と積まれたごみを自分の大事な財産と見なしている人が少なくない。そんなごみ屋敷が過去5年に全国で5224件確認されていた。環境省がこのほど発表した自治体アンケート結果で明らかになった事実である。全1741市区町村のうち、ごみ屋敷があると回答したのは661市町村。東京が880件と最も多く、愛知の538件、千葉の341件がこれに続く。住人への指導などで半数は片付いたものの、あとはお手上げという
▼衛生状態は悪いわ火事は心配だわで周りは迷惑この上ない。高齢でごみ出しが困難になったケースは対処も容易だが、ごみを私財と主張している場合は行政もおいそれとは手が出せない。集めた物をごみと言われると、人生を否定された気がするのだろう。問題は案外根深い。