高耐久・高耐寒グラウト混和剤開発 日本高圧コンクリートなど

2023年04月05日 08時00分

零下20度でも凍結せず 農業用水路間詰め部などモルタル混和剤にも注目

 日本高圧コンクリート(本社・札幌)は、プレストレストコンクリート橋の寒中施工に有効な高耐久・高耐寒グラウト混和剤を日産化学(同・東京)、北見工大の井上真澄研究室と共同開発した。外気温がマイナス20度になっても凍結せず水和反応が進行するため、従来のように仮囲いやジェットヒーターで養生する必要がない。最近は橋脚の鋼板巻き立て工事のほか、農業用水路の間詰め部や建築パネルの接続部など幅広く使える高耐寒モルタル混和剤も開発し、市場から注目されている。

高耐寒モルタル混和剤などを開発した日産化学の須藤部長(左)と日本高圧コンクリートの吉岡部長

 コンクリート材料はマイナス環境下に入ると凍ってしまい、後から温度を与えても所定の強度が出ないため、北海道を中心とした寒中施工の難しさの一つにある。対策として囲いを設けながらジェットヒーターなどで内部を暖めて養生するが、エネルギー消費やCO排出の面から改善が求められている。

 高耐久・高耐寒グラウト混和剤は、冬季のプレストレストコンクリート(PC)橋グラウト工事に特化した製品。外気温マイナス20度から0度の環境下でもセメントの水和反応を進行させ、グラウトの強度を発現させる。

 高耐寒モルタル混和剤は、外気温マイナス10度でもセメントの水和反応を進行させる製品。モルタル材に耐寒剤を添加する「収縮許容型」と、耐寒剤と膨張材を添加する「無収縮型」の2種類を用意する。

 このうち無収縮型の高耐寒モルタル混和剤は橋だけでなく、構造物の柱基部、農業用水路の間結部、建築物のカーテンウォール接続部など幅広い用途が期待できる。橋脚の鋼板巻き立て工事は渇水期に進められるため、寒中施工に特化した高耐寒モルタル混和剤が有効。建築の大型物件は複数年度で進むことが多いことから、同製品を使えば季節を選ばず工事ができる。

 現行のPCグラウト設計施工指針では、1日の平均気温が4度以下の場合、注入作業をしないことを標準とする。グラウトは凍結すると膨張してコンクリート部材にひび割れを生じさせる危険があるため、積雪寒冷地ではグラウトの寒中施工を避けるのが一般的だった。

 高耐久・高耐寒グラウト混和剤は、「マスターフロー125」の名称でポゾリスソリューションズ(本社・神奈川県茅ヶ崎市)が製造・販売する。高耐寒モルタル混和剤は、小泉製麻(同・神戸)が製造・販売を担う。

寒中施工で苦しむ北海道の人のために

 開発で中心人物となった日本高圧コンクリートの吉岡憲一PC事業部執行役員技術部長と日産化学の須藤裕司基礎化学品営業部部長は、北見工大の鮎田耕一名誉教授の門下生だ。共に鮎田研究室で寒中コンクリートを学び、卒業後は別々の分野に進んだものの札幌で開かれた学会の研究発表会で再会。卒業から30年後の2018年、凍らないグラウトを造ろうと意気投合し、鮎田研究室を引き継ぐ井上教授の下で開発に着手した。

 中でも、無収縮型の高耐寒モルタル混和剤は「トライ&エラーの繰り返しで開発に苦労した」と吉岡部長。モルタルに耐寒剤を添加すると、凍らないが収縮してしまうため、膨張材を入れることで縮まないようにする。

 しかし、膨張で組織が緩くなってしまうため強度が小さくなる弊害も出る。収縮せず膨張しすぎないスイートスポットを見いだすために、供試体を何体も制作した。結果、モルタル1袋25㌔当たり膨張材7―19㌘のベスト配合を見極めた。

 「素材会社と工事会社がタッグを組み、想像を超えるスピードで製品化できた。寒中だけでなく、さび防止にも効果が出せるので広く使ってほしい」と須藤部長。吉岡部長は「30年が経過し、鮎田先生から初めて〝目の付け所が良い〟と褒められてうれしかった。研究室に在籍中、〝北見工大は寒中施工で苦しんでいる北海道の人たちのために研究や技術開発をしている〟と教えられたことを今も忘れない。今後は、ありとあらゆる所に使ってもらえるよう、コンクリートの方でも挑戦したい」と話している。


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