西村組の若手技術者が寒地土研で研修

2023年04月07日 08時00分

河川・港湾工事の研究成果を報告

 実験や数値計算などの専門的研究を通じて、社会基盤整備の基礎を身に付けてもらおうと、寒地土木研究所は民間企業の研究者や技術者を依頼研修員として受け入れている。2022年度は、西村組(本社・湧別)の若手技術者2人が12月から3カ月間、研究・分析に取り組んだ。2人の成果報告会に付き添った西村組の加茂谷学執行役員は「スキルアップはもちろん、仕事への理解が深まり、悩みの解決にもつながる」と話し、今後の成長に期待していた。

関係者らに囲まれる鈴木さん(左から2人目)と木村さん(同3人目)

 2人は、同社工事課に所属する入社3年目(当時)の鈴木慧さんと入社1年目(同)の木村宏海さん。

 研究課題として、鈴木さんは河川整備の基礎情報となる2段タンク型貯留関数による流出解析を与えられ、木村さんは港湾工事で活用する越波水量測定を任された。3カ月間にわたって実験と数値計算、分析、現場見学を重ね、3月24日に関係者を前に研修成果を報告した。

 鈴木さんは、21年度に続いて2年連続で依頼研修員になった。報告会の中では、初めて触れたPython(プログラミング言語)でデータ解析を進め、河川流入量の違いと原因をスライドで説明した。西村組は港湾工事を主力とするが「今回の研究のおかげで、河川工事の設計意図を考察できるようになった」と自信を付けた。

 女性技術者の木村さんは、護岸模型を使って効果的な断面を模索。報告会では、実験を通じた学びとして、最適な断面構造の発見ではなく、実験が失敗した理由を考察した。「消波工の積み方、積む位置が失敗の原因だった。実際の施工も同じで、現場で先輩がやっていたことの意味が理解できた」と熱弁し、聞いていた関係者も「成功と失敗の発見こそが実験」と評価していた。

 3カ月の研修を終え、鈴木さんは「同業他社の現場を見て、あらためて100年地図に残る仕事がしたいと感じた」と目を輝かせた。木村さんは「現場で課題を見つける力を付け、将来は研究開発室で民間企業らしいスピード感ある仕事をしたい」と将来像を描く。4月から新たな現場に配属されたが、成長した2人の姿が見られそうだ。

 寒地土研の依頼研修員制度は、前身の北海道開発土木研究所からあったが、近年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、受け入れが減っていた。平野誠治上席研究員は「研究者との人脈形成も魅力。北海道開発の技術的課題の解決に向け、官民一体の機運づくりにもつながれば」と話している。


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