人が住む家の基本機能は何かといえば、まず身を守るシェルターの役割を果たすことである。文部科学省の家庭科指導資料にそうあった。安全な暮らしが確保されて初めて食事や子育て、だんらんもできるのだから当然だろう
▼とはいえ集合、戸建て問わず、デザインや安さに気を取られ、基本がないがしろにされている家も少なからずある。日本はまだしも、世界に目を向けると安全性を無視した住宅も珍しくない。人はなまじ知性がある分、時に肝心なことを忘れ、余計なものに手間を掛ける。動物はそうではない。「動物の家は力学的に安定していて、自然の猛威にさらされてもこわれ難くなっている」。世界中で動物と触れ合い、観察してきた「ムツゴロウ」さんこと作家の畑正憲さんの言葉である。『自然界の建築家たち』(ミサワホーム総合研究所)に記していた
▼そのムツゴロウさんが5日の午後、中標津町内の病院で亡くなったそうだ。87歳だったという。知り合いのおじさんを失った気分である。1980年からフジテレビ系列で放送していた『ムツゴロウのゆかいな仲間たち』を、毎回わくわくしながら見ていた人も多いに違いない。ムツゴロウさんいるところ必ず面白い事件ありである
▼改めて振り返るとムツゴロウさんは、人は万物の霊長というが本当に動物より優れているのかと、常に問い掛けていたように思う。人は目先の楽しみや快適さのために生物の家ともいうべき地球も傷つけてきた。世界中の人が協力して壊れにくい地球をつくること。ムツゴロウさんが残した宿題である。