札幌市で開かれていた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境大臣会合は16日、共同声明を採択して閉幕した。G7に限らず新興国・途上国など世界を広く見据える会合だった。「具体的な行動内容をしっかりと書き込んだ」(西村明宏環境相)と話すように、日本の中の北海道というローカルから発信し、全世界、人類共通の数値目標や将来像を引き出した。建設業を含む道内産業・エネルギー業界が2050年までの温室効果ガス排出量正味ゼロ(ネットゼロ)を目指す上で、重要な指針となりそうだ。(関連記事2、12面に。建設・行政部 高田陸記者)
■CCUS・ハブ事業
苫小牧では、二酸化炭素(CO₂)の回収・有効活用・貯蔵(CCUS)の大規模実証が国内で唯一実施されている。共同声明は、地中貯留インフラの可能性分析と拡張の必要性を新たに明記し、さらに地域ハブの将来性にも言及した。
CCUSで注目される「ハブ&クラスター」とは、複数の排出源からCO₂をハブ拠点に集め、活用または輸送・圧入するサプライチェーンの在り方を指す。
既に苫小牧では、大規模実証を担う日本CCS調査が伊藤忠商事などと共同で、液化COの船舶輸送技術を確立するため輸送船や関連設備の整備に取り組む。北海道電力と出光興産、石油資源開発の3社も30年度までの事業立ち上げを視野に入れ、回収設備やパイプラインの技術検討、貯留適地調査を進める。地域ハブへの言及は、各事業の重要性を端的に表現したと取れる。
■化石燃料・削減対策
洋上風力や太陽光など再生可能エネルギー導入を加速させる。西村康稔経済産業相は「排出削減が講じられない化石燃料はフェードアウトする強い決意で臨む」と述べ、石炭だけでなく液化天然ガス(LNG)も段階的廃止の対象とした。
道内では現在、北海道電力が27年3月末に奈井江と砂川の石炭火力発電所を廃止する一方、大型の苫東厚真発電所は30年ごろまでにアンモニア混焼の導入検討を進める。
北電は石狩湾新港LNG火力発電所で従来よりCO₂排出が少ないガスコンバインドサイクル方式を採用。北海道ガスの石狩発電所も、複数エンジン制御や排熱活用によりCO₂を年間25万㌧削減しているという。
■建築物の脱炭素
建築物の脱炭素化については、省エネ性改善や電化、再エネによる冷暖房、エネルギーマネジメントに向けたデジタル化推進を具体的に示した。化石燃料暖房の新設を取りやめていく「移行の加速」から「段階的廃止」へと表現を強めた。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に詳しい北海学園大の小柳秀光教授は「再エネとエネルギーマネジメントは一体で進めることが重要だ」と指摘。道内では既存建築物の断熱性や昼光利用など、省エネ性に改善の余地があると解説する。
■本道の重責あらためて
声明はネットゼロという共通目標に向け各国の異なるエネルギー事情や地理条件に応じた「多様な道筋」を開く。広大な土地を有し洋上風力発電が数多く計画される北海道に期待されるのは、日本の道筋を先導する役割だ。日本が議長国として取りまとめた共同声明は、ネットゼロに向け本道の担う重責も示した。