2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた動きは、企業経営に波及しつつある。大企業を中心に意識が高まっていて、サプライヤー(仕入れ先)の中小・零細企業に脱炭素の対応を求めるケースも少なくない。一方、物価高騰で苦境の下請け企業も多く、対応が難しいのが現状だ。十勝管内の建設関連業者は、ハイブリッド型バックホーの導入など脱炭素に対応した製品の活用・開発といった工夫を凝らして脱炭素を進めようとしている。(帯広支社・草野健太郎記者)
脱炭素を進めるためには二酸化炭素(CO₂)排出量を「見える化」する必要がある。燃料使用や電気使用量などを数値化することで目標指数を設定できるからだ。東京海上日動営業推進部モビリティ室の髙橋正樹課長は「カーボンニュートラルの第一歩で、何事も視覚的に捉えることが重要」と説く。
見える化は大企業を中心に進んでいる。東京証券取引所のプライム市場への上場に、気候変動問題への取り組み開示が必要となったため。専門家によると、上場目的に開示している側面もあるという。
建設業界を見ると、スーパーゼネコンを中心に脱炭素を推進。一方、中小・零細企業での現実は厳しい。専門家は「仕入れ先や下請けへの浸透は時間を要する。地力がある企業は対応できるが、中小や零細にとっては難しい話」と分析。物価高で経営が圧迫されている企業も多く、脱炭素に取り組む余裕がないのが現状だ。ある十勝管内の下請け業者は「元請けに値段交渉ができず、本当に苦しい」と漏らす。
十勝管内では脱炭素に対応した製品に活路を見いだす企業もある。脱炭素製品は、使うだけでCO₂削減に貢献するため最も手軽で分かりやすい手段となる。平田建設(本社・士幌)は、ハイブリッド型のバックホーを現場に導入。パワーなどの性能は従来のバックホーと変わらず燃費を4割低減。現場のCO₂排出量抑制に効果を発揮する。共成レンテム(同・帯広)は、屋根に太陽光パネル4枚を装備したソーラーハウスを開発。持ち運べる蓄電池を2台搭載し、購入電力供給を抑制できる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高まりさんは「将来的に絶対に買ってもらえる。脱炭素はビジネスチャンスでもある」と強調する。
CO₂排出量を削減し、脱炭素に近づくためには対応製品の積極活用など、時代の流れに乗る変革が求められている。