道総研が公共施設への地域材活用で「森町モデル」

2023年06月06日 08時00分

大空間施設への導入目指す

 北海道立総合研究機構(道総研)林産試験場は、公共施設への地域木材活用の可能性を探っている。森町のスギやトドマツ、カラマツで造った低コストな木造施設を「森町モデル」として検討。地域木材のみを使い開発した平行弦トラスに十分な強度があることを明らかにし、大空間を含む施設の施工で地域木材活用の選択肢を増やす。木材の地産地消に貢献する技術の確立は、伐採適期を迎えた樹木が多い本道森林の利用価値を大きく底上げするだけに、研究の動向が注目される。森町モデルを用いた施設の建設は2024年度以降の具体化を目指している。

戸田研究主幹らが開発した平行弦トラス。地域材だけで強度を
確保した

 森町にはトドマツ、カラマツのほか道内では希少なスギが生育する。林産試験場性能部構造・環境グループの戸田正彦研究主幹らは3種の町産材を公共施設に活用するためそれぞれの特長を調査した。

 力が加わったときの物体の変形の程度を表すヤング係数は丸太の時点でスギ、トドマツ、カラマツの順で大きく、カラマツが最も変形しにくいことが分かった。柱に用いる正角材や梁に使う平角材には、トドマツは割れやすくカラマツはねじれが大きいことからスギが最適だった。反りや曲がりが小さいトドマツは2×4材には適していると評価した。

 ただ、森町でこれらの特性を踏まえ公共建築物に活用しようとしても、公民館の会議室や体育館といった大空間で求められる6―12mの梁を製造できる工場が町内には存在しない。そこで、町産材を組み合わせて作れる平行弦トラスを開発した。

 トラスは4部材の組み合わせで作る。この中で上下に平行し最も負荷がかかる上弦材、下弦材には、ヤング係数が高く強度を確保できるカラマツを採用。上・下弦材の間に斜めに入る斜材は圧縮力がかかるため、柱に適するスギが向く。また、上・下弦材を挟み込む束材は幅広い断面を確保する必要があるため、2×4材に適性があるトドマツを2×6規格で用いた。

 トドマツのみ、カラマツのみの平行弦トラスも作り、強度試験を実施。いずれも設計荷重に対して十分な性能があると確認した。これにより、長スパンの梁の製作能力がない自治体でも、地元産材による大空間の建築ができる可能性を示した。

 同試験場では23年度末までに、このトラスを用いた建築物の実現を検討している。24年度以降、町産材をふんだんに使用した公共施設の整備を見据える。森町モデルの形成が全道の地域材活用に新たな道筋を示しそうだ。


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