昔話「舌切りすずめ」で最も盛り上がるところは、意地悪なおばあさんが大きなつづらを持って帰ってきて、喜んで開けてみるとムカデやヘビ、お化けが飛び出してくる場面だろう。優しいおじいさんがその前に大判小判の詰まった小さなつづらをすずめにもらって帰ってきて、それをうらやんだおばあさんが半ばぶん取ってきたのだった
▼意地悪への戒めはもちろんのこと、欲をかいてもいけないという教えである。性格の悪さは別にして、他の人がもうけているのを見ると、自分にもできるのではと後追いしたくなるのが人のさが。ただし、それで痛い目に遭うこともしばしばである。株式投資ではよくある失敗らしい。株価続伸につられて飛びついたものの、買った直後に暴落して大やけどといった話である
▼そんな心配も頭をよぎる昨今の株式市場の過熱ぶりでないか。きのう、東京株式市場で日経平均株価が一時、3万2700円の値を付けた。1990年7月以来、およそ33年ぶりの高値更新だという。ことしに入って堅調に推移してはいたが、先月17日に3万円の大台に乗り、先週末から今週に掛けて一気に跳ねた。危ぶまれていた米政府の債務不履行が土壇場で回避されたのが大きいと聞く。株安が進んでいた米ダウ工業株は2日に反転。これが日本にも波及したようだ
▼きのうの終値は3万1913円。前日から593円下がったとはいえ依然高水準である。二匹目のどじょうを狙って柳の下を見つめる投資家が続々と現れているに違いない。どうか大きなつづらを夢見て損をしませんように。