部屋の温度差など利用 〝呼吸する〟パッシブ換気システム
日本建築材料協会の優良製品・技術表彰2023で、グッドマン(本社・札幌)の「グッドマン換気口」が国土交通省住宅局長賞に選ばれた。部屋の温度差や風圧などの作用を利用するパッシブ換気システム。12年に北国の省エネ・新エネ大賞、13年にエコプロダクツ大賞審査委員長特別賞、17年に発明協会会長賞を受賞していて、中小企業による発明や製品開発のトップランナーとして確固たる地位を確立した。
優良製品・技術表彰は、建築材料や住宅設備の優れた製品・技術を社会に発信し、業界全体の発展と向上に寄与することを目的とした制度。日本で唯一、経済産業省と国交省が認めた建築材料や住宅設備をたたえる賞として位置付けられている。
住宅局長賞に選ばれたグッドマン換気口は、空気の自然な流れを利用するパッシブ換気システムの一種。室内と屋外側の各換気口をつなぐパイプ内部を板で上下に仕切り、上から暖かい空気が逃げ、下から冷気が入ってくることで、排気と給気の両方ができる。その様子から〝呼吸する換気口〟の愛称を持つ。
高気密の建物に有効な技術。室内側に配置するダンパーの開口部を調整することで、快適な自然風を四季を通じて得られ、冬はダンパー上部で室内外の空気が混じり合い、冷気が降下する〝ダウンドラフト〟を防ぐ。
シックハウス対策には、機械換気と併せた第三種換気、いわゆる〝ハイブリッド換気〟を提案する。長期不在時や停電時でも給排気を同時に得られる上、機械騒音を抑えられるので快適な居室空間の維持と省エネを両立する。
喫茶店を経営していた頃、店内に充満するたばこの煙が気になり、住宅雑誌を読みあさって換気口を研究するようになった斉藤武夫社長。知人の紹介で大学教授と接点を持ち、省エネ住宅を研究していた北海道職業訓練短期大学校の佐々木隆教授(当時、後に岩手県立大名誉教授)と知り合い、開発に弾みが付いた。
佐々木教授は、国内外の学会に論文を発表したり、通気性や防風雨性の性能実験を北方建築総合研究所でも実施するなど、グッドマン換気口の開発を手弁当でサポート。21年に他界した。斉藤社長は「30年余りの付き合いだった。グッドマンを〝俺の発想と同じだ〟と支持してくれた」と振り返る。
近年のコロナ禍は、通気性の良さとメンテナンスのしやすさから、老健施設や飲食店などのクラスター対策で採用される。北海道は冬の結露によるカビ対策に悩む世帯が多く、健康面からグッドマン換気口に付け替えるユーザーが多い。
斉藤社長は「顧客から〝付けて良かった〟と喜ばれるのが原動力。最近は電気料金が上がったり健康意識が高まっているため、グッドマン換気口を使ってもらいたい」と話している。