供給・価格安定切望 脱炭素に手が回らず
十勝管内企業の停電対策のもろさが課題となっている。帯広商工会議所の調査で市内269社のうち、7割弱がブラックアウト時に営業停止へ追い込まれると回答。非常用電源の設置も進んでいない。電気自動車(EV)の活用などで事業継続(BCP)対策が求められるが、電気代の値上げも徐々に経営を圧迫。管内の元請け業者は不安を口にする。(帯広支社・草野健太郎記者)
5月17―31日に実施した電気代と電源構成に関する調査によると、65%の企業がブラックアウト時の営業停止は避けられないと答えた。万一の備えとして非常用電源を設置する事業所は20%にとどまった。帯広商工会議所は、急激なコスト上昇により自社経営で手一杯の企業が多いとみる。
停電時にはEVが活用できる。ある管内のハウスメーカー社長は「ブラックアウトを経験し、会社にあると心強い。蓄電池として使えばBCP面でも安心」と話す。
だが、自宅への充電設備設置も進まないのが現状だ。札幌では分譲マンションの駐車場へ設置が進むが、十勝ではマンション需要の頭打ち感を指摘する声もある。鍵になるのは戸建てだが、ある管内の自動車ディーラー幹部は「個人への意識高揚には時間を要する」と厳しい見方だ。
電気代の値上げも厳しい。市内269社のうち、2023年4月分の電気代上昇額は、5000円未満が最多の45%を占めた。ただ、個人事業主などは低圧電力契約をしている場合が多く、6月の値上げでさらに厳しい事態が想定される。この一年でさまざまなコストが高騰する中、零細企業などの経営は厳しさを増す。
管内のある元請け業者社長は「家庭への影響はあるが、業務ではあまり感じない」とする一方で「下請けからは厳しい声も聞く。先行きが見えず、いずれ元請け側にも影響が出てくるかもしれない」と危機感を募らせる。
電気調達に関しては、約80%の企業が供給と価格の安定を望んでいる。そのうち半数が「太陽光」と「原子力」が重要と回答した。中でも泊原発再稼働については、保守保安体制への関心が52%で最も高い。次いで再稼働での電気代動向が46%と続く。
北海道電力は、化石燃料を使用しないスマート電化住宅を提唱し、電気料金の抑制をアピールする。しかし、工務店などへの普及は道半ばだという。余裕のない下請け業者も一定数いて、脱炭素への取り組みなどに手が回らない現状。北電は地道な情報提供を続ける。
今後、帯広商工会議所工業エネルギー委員会は発電施設の視察などで電力事情の理解を深める考え。北電との意見交換も予定する。