各部局で取り組み検討 積雪地でも設置費抑える新技術動向注視
太陽光発電のコーポレートPPA(電力販売契約)活用に向け、札幌市が取り組みを強化している。2023年度は市有施設として初めて、円山動物園での導入を図る。廃棄物最終処分場や上下水道施設での事業も検討中。積雪地で設置費用を抑制し得る新たな技術の開発にも着目している。

壁面に設置可能なペロブスカイト太陽電池も注目される
(積水化学工業提供)
発電事業者が自治体や企業から建物屋上や遊休地を借り受けて自己所有の発電設備を置き、貸主の自治体など需要家に売電するビジネスモデル。事業者は長期にわたって安定収入を得られ、需要家は電力消費のCO₂排出量を減らせる。需要家の敷地内で発電するオンサイトPPAと、敷地外で展開するオフサイトPPAがある。
再生可能エネルギー開発のレーベンクリーンエナジー(本社・東京)は10月、円山動物園カバ・ライオン館に発電パネル170枚を設置する。総出力は75kW。20年間の売電契約を市と結び、設置・維持管理・発電を一貫して担う。
3月に市と事業協定を締結。環境省の地域脱炭素移行・再エネ推進交付金で事業採択され、工事費の2分の1に当たる800万円の補助を受ける。
各部局で取り組みの検討が進む。環境局は25年度にも、山本処理場でオフサイトPPAを念頭に太陽光発電を導入する。7.38haの更地が対象。23年度に土質調査、24年度に事業者への聞き取りをする。
水道局は6月、北ノ沢第2などポンプ場7カ所でPPAの導入可能性調査に着手した。川沿庁舎など3施設で太陽光発電を導入済みだが、PPAの検討は初。耐震性などを踏まえた施工方法や設置可能面積について事業者にヒアリングをしている。受配電設備への接続や光害による影響などにも配慮した上で、設置の可否を判断する。

水道局川沿庁舎に導入した太陽光発電
ただ、「積雪対策でパネル設置費用が高くなり、事業者が採算性を確保できないのでは」(同局担当者)との懸念もある。壁面に設置できるペロブスカイト太陽電池など、新たな技術の開発動向を注視する考えだ。
下水道河川局は複数の遊休施設でのPPAを検討している。
固定価格買取制度(FIT)の終了で、PPAは全国的な広がりを見せる。道内では釧路町や富良野市が運用を始めているほか、苫小牧市が年度内に火葬場などで導入を予定。他の自治体でも脱炭素化に向けて取り組みが加速しそうだ。