7月1日時点道内基準地価/ラピダスで千歳の地価上昇 住宅・商業地3位まで独占

2023年09月19日 18時18分

 道は、2023年7月1日時点の道内基準地価を発表した。林地を除く宅地995地点の全道平均変動率はプラス2・3%。住宅地、商業地、工業地の全ての用途が前年度を上回り、3年連続の上昇となった。上昇率を見ると、ラピダス(本社・東京)の次世代半導体工場新築で注目を浴びる千歳市が住宅地、商業地ともに上位3位までを独占。住宅地は戸建てに加え、企業進出で共同住宅などの需要が旺盛となっており、商業地も半導体関連企業のオフィス用地需要や投資目的の土地取引が活発化しているとみられる。

 道内の調査地点(基準地)は1013地点で、内訳は住宅地725地点、商業地255地点、工業地15地点、林地18地点。

 1平方㍍当たりの全道平均価格は宅地4万5000円。うち住宅地は2万3600円で平均変動率は2・2%。商業地は石狩管内全市や帯広市などが上昇し、平均価格は10万7800円で2・2%の伸びを示した。工業地は前年度に引き続き物流関係の用地が堅調で6・8%増の1万4900円、林地はプラス1・4%の139・9円となった。

 地価が上昇した地点数は、住宅地が前年度に比べ19地点多い229地点、商業地は6地点多い76地点、工業地は2地点多い8地点。下落は、住宅地が13地点減の357地点、商業地が16地点減の143地点、工業地が同数の4地点だった。

 札幌市とその周辺部は需要が多く供給が足りない状況で、倶知安町やニセコ町周辺、富良野市といった外国人が好む観光地域も上昇傾向にある。一方、基幹産業が衰退して人口が流出し、需要が少なくなっている旧産炭地などの価格は下がり続けるなど、今回も二極化が続いている。

 ■千歳で住宅需要活性化

 住宅地は上昇率の1―3位、7、8、10位に千歳市がランクイン。1位はプラス30・7%の栄町5丁目3ほかで、東雲町5丁目52がプラス30・5%で後に続いた。全国の上昇率も千歳市が上位3位までを占めている。元から堅調だった戸建て需要が落ち着くとみられたが、ラピダス進出で活性化。今後もラピダスや関連企業の進出に伴う雇用増、人口増が見込まれ、宅地需要の増大は続く可能性が高いという。前年度に1位だった北広島市共栄町4丁目8の23も引き続き北海道ボールパークFビレッジ(BP)効果で価格を伸ばして6位に入った。

 倶知安町の地点は今回も圏外だったが、外国人観光客の増加に伴い再開発が回復傾向にあり、以前のような上昇幅ではないものの上昇している。また、倶知安町を中心に羊蹄山を囲むような形で真狩村や留寿都村が14%程度上がっていて、核となる倶知安町にアクセスしやすいところに需要が流れたとみられる。

 最高価格は札幌市中央区宮ケ丘2丁目474の86で、3・4%上昇の1平方㍍当たり36万7000円。同地点の上昇幅は若干縮小したが35年連続の首位獲得で、上位10社の顔ぶれも大きく変わらなかった。

 ■商業地上昇率3位まで30%超

 商業地の上昇率1位はプラス30・8%の千歳市北栄2丁目1345の27。背後住宅地の需要増に伴う価格上昇を反映したもの。全国1位は台湾積体電路製造(TSMC)が半導体工場を新築する熊本県菊陽町近くの大津町だが、2位にランクインしている。道内2、3位も千歳市の地点(東雲町1丁目6の4、末広2丁目122の2ほか)が入り、上昇率は30%を超えた。同市では郊外の幹線道路沿いでも店舗の開発計画が進展し、利便性が高い地域ではマンション用地との競合で地価が上昇している。

 価格上位10地点は全て札幌市内。札幌市中央区北3条西2丁目1の13ほかの「NC・HOKUSEN北三条ビル」が39年連続で全道1位。1平方㍍当たりの価格は40万円増の470万円だった。前年度と順位が入れ替わったのは2位と3位で、今回の2位は北区北7条西2丁目6、3位は中央区大通西6丁目6の1。北区北7条西2丁目6はJR札幌駅北口でオフィス需要が伸びていることが要因とみられ、札幌駅の北側や東側では再開発が進み繁華性の向上が期待されることから地価上昇が継続している。

 ■工業地も半導体が影響

 工業地の地価にもラピダス進出が影響。トップは千歳市泉沢1007の39ほかで、前年度の横ばいからプラス29・4%と大幅に伸びた。基準地は次世代半導体工場が建設される工業団地「千歳美々ワールド」から離れているが、ここまで影響が及んでいる。北海道不動産鑑定士協会の斎藤武也副会長は「価格の上昇過程を見ると、TSMCが進出した熊本県の工業地も同じような状況になっており、それを追う形になる見込みだが、千歳市の方が価格水準が低いので上昇率はかなり高くなるのでは」と話す。

 ■帯広は宅地が堅調

 人口10万人以上の都市のうち、札幌市の上昇率は住宅地がプラス12・5%、商業地がプラス11・9%だった。上昇率1位は住宅地がプラス22・5%の東区東苗穂12条3丁目654の117、商業地が中央区北1条西23丁目283の10。住宅地は地価の安い郊外への需要流入、商業地はマンション需要の大幅な増加が要因となっている。下落地点はどちらもなかった。

 小樽市は、観光需要の回復などにより2020年度以来3年ぶりに商業地が上昇へと転じた。住宅地は中心部や札幌市に隣接地域の価格が上がったため2年連続の上昇となった。

 帯広市は住宅地が8年連続、商業地が5年連続で上昇。住宅地は利便性の高い地域や低価格帯の土地の需要が増大していて、上昇幅が拡大し、平均変動率は3・1増のプラス12・9%に伸びた。苫小牧市はイオンなど商業施設が集積する東部地区の需要が堅調で、住宅地、商業地ともに2年連続で増加を示している。

 


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