業界関係者は増額に安堵
国土交通省は16日、2024年3月から適用する公共工事設計労務単価を発表した。3月1日以降に契約する直轄工事に適用する。道内の伸び率(単純平均)は、44職種平均で前年度より5.1%上昇。前年度に引き続き、全職種で労務単価が上がっている。普通作業員など主要12職種平均でも5.1%と同じ伸び率を示し、13年連続で前年度を上回った。伸び率は全職種・主要12職種ともに全国平均(同)を下回るが、時間外労働の上限規制が迫る中、業界関係者は大幅な増額に安堵(あんど)している。
道内は、国交省と農林水産省の直轄・補助事業から無作為に抽出した工事759件、7556人から有効標本を確保。集計結果から労務単価を決定した。
44職種平均は2万9180円と、前年度より1416円増額した。技能労働者数が多い主要12職種の単純平均は2万2950円で1117円増額。伸び率順に見ると、運転手(一般)7.8%増、軽作業員7.4%増、運転手(特殊)6.4%増、とび工6.1%増、左官6%増という状況だ。
全国ベースでは、全職種平均の単価は前年度比5.9%増の2万3600円(伸び率は単純平均、金額は加重平均)。東日本大震災後の12年度に単価算出手法を大幅に変更以降3番目に高い伸び率で、直近10年間で最大。12年連続で上昇した。
主要12職種は6.2%増の2万2100円。伸び率は交通誘導警備員Bの7.7%増が最も大きく、これに運転手(一般)の7.2%増、鉄筋工と型枠工の6.6%増、交通誘導警備員Aの6.4%増が続く。
今回の単価改定では、時間外労働の上限規制適用に対応するために必要な費用を反映している。
労務単価は1997年度の初公表以来、公共投資額の減少やダンピングの横行などで11年度まで下落。12年度に単価算出手法を大幅に見直し、以後上昇に転じている。
近年は、義務化分の有給休暇取得に要する費用、時間外労働時間を短縮するために必要な費用を反映。総合評価方式での賃上げ加点といった制度も絡み、単価上昇の機運が高まりを見せていた。
また、4月からの時間外労働の上限規制が迫り、技能労働者の実質的な実入り減少への懸念が浮上。これを補填する意味での単価上昇を求める声も上がっていた。
単価改定を受け、北海道建設業協会は「建設業の担い手確保に向けて技能労働者の処遇改善が必須の状況の中、設計労務単価が12年連続で上昇したのは大変ありがたい」とコメントした。
道内の地方ゼネコン幹部は「単価が上がること自体は喜ばしい」とした上で、上昇分を支払うだけの利益を確保するためには「経費率の見直しも必要では」と指摘する。
函館市内の警備会社社長は、全国ベースで7.7%の伸び率となった交通誘導警備員Bについて「主要12職種では一番低い水準で、労務単価のアップを国にも陳情してきた。これだけ上昇するのは珍しい」と歓迎。一方で、現在確保している高齢を含めた従事者の待遇改善が喫緊の課題という認識を示している。