2014年道内新設住宅着工のうち、分譲マンションの戸数は前年比23%、531戸減の1769戸となった。アパートなどを含めた賃貸マンションは9340戸で、分譲と合わせると9.2%、1135戸減の1万1109戸にとどまった。資材や人手不足による建設費の高騰に加え、「着工済み在庫がまだ残っている」(志田真郷インフォメーションシステムキャビン社長)ことから、事業者が新設を控えたとみられる。15年は、相続税対策を狙った賃貸需要が一段落する一方、省エネ住宅エコポイントなどの施策により持ち直すとの見方がある。
国土交通省が公表している新設住宅着工戸数のうち、構造がSRC造、RC造、S造のいずれかで、利用関係が分譲に該当する共同住宅を対象に集計した。賃貸の共同住宅は、マンションのほかアパートなどを含む。
過去10年の着工動向を見ると、リーマンショックの影響を受けた09年に1万戸を切ったが、その後は徐々に回復。12年は、国内外からの不動産投資の増加やサービス付き高齢者向け住宅制度の開始で賃貸物件が伸び、08年と同水準まで戻った。
14年は分譲、賃貸とも減少したが、改正相続税法の施行を控え、相続税対策としてアパートなどの収益物件に需要が集まったことから、賃貸のマイナス幅が6%に縮小。一方、分譲は9割を占める札幌が26.1%減と、過去5年で最も大きな落ち込みを示した。
08年度を基準に取引価格を示した国交省の不動産価格指数によると、北海道のマンション指数は年々上昇傾向にあり、14年10月には関東、近畿地方が1割増にとどまる中、道内は148.4%と高い値を示した。
札幌を中心に不動産市場を分析している志田氏は「駆け込み需要の反動減は少ないものの、戸建てと違ってマンションは価格転嫁のしようがなく、地方都市のような地価の安い所ほど建設費高騰の影響を受けやすい」と指摘。販売価格の上昇に伴い、購入者がシニアや富裕層などに限られることから、事業者が供給を抑制しているとみている。
反動減で落ち込んだ市場を持ち直そうと、国交省は緊急経済対策や15年度税制改正で支援策を打ち出した。戸建てや分譲マンションなどの共同住宅の新築については、トップランナー基準相当の断熱性や設備の省エネ性などを新たな条件に、商品券などと交換できる住宅エコポイントを継続する。
税制改正では、住宅ローン減税とすまい給付金で住宅取得を後押しするほか、サービス付き高齢者向け住宅の不動産取得税の控除を2年、固定資産税の減額を5年それぞれ延長する。
建設経済研究所は「省エネ住宅エコポイントなどの施策により、15年度は回復が見込まれる」と予測。一方、矢野経済研究所は、支援策によって持ち家などを含めた着工戸数は14年度を上回るとしながらも、分譲マンションは20%程度の減少を見込んでいる。