橋梁やトンネルといったコンクリート構造物の点検業務に対し、長寿命化計画の立案や、点検時の交通整理、車両提供などを総合的に支援する「北海道建設基盤保全協同組合(HIP)」が発足した。関係業者が連携し機材の手配などをワンストップ化することで、確実な業務運営と低コスト化をサポート。点検技術者の育成も進め、人材が不足する現状に一石を投じたい考えだ。
橋梁やトンネルなどの社会インフラの多くは高度経済成長期に整備されており、老朽化が進む中、維持管理が課題となっている。2014年7月には、国土交通省がトンネルや2m以上の道路橋に対し、5年に1度の頻度で近接目視による点検を義務付ける省令を発令した。
しかし、橋梁だけでも道内に3万橋余りある。行政職員やコンサル会社勤務の経験がある吉岡繁勝事務局長は人材、機材ともに不足する中、「点検業務は一つの会社だけでできるものではない。どのように補修するべきかの計画、点検時の交通整理なども必要。業務が煩雑になり個別に手配していたのでは工期には間に合わない」と作業効率への課題があることを指摘する。
同協組は2月13日に発足。賛同する会員を募る方式で事業に取り組む。3月現在、構造物点検業者5社、橋梁点検車や高所作業車を所有する業者1社、交通誘導警備業者2社が賛同している。理事長には建設保全(本社・札幌)の小室秋雄取締役が就任した。
点検業務の元請け企業から委託を受け、会員企業を連携させて技術者や道路警備員を建設補助員として派遣。このシステムによって必要な人材、機材を迅速に手配できるようにした。
技術士の有資格者は、総合技術監理部門が2人、建設部門(道路)1人、同部門(鋼構造及びコンクリート)2人、応用理学部門(地質)1名が在籍。そのほか、コンクリート診断士2人、橋梁点検技術研修修了者9人など、多種多様な人材をそろえた。各社の橋梁点検の実績は12年度からの3年間で国道、道道、市町村道合わせて約2600橋、調査・診断は25橋、補修設計は772橋あるという。
道内で不足が課題となっている点検車、高所作業車は組合で自己所有する。現状では1台ずつだが、今後随時増やして行き、スピーディーに配車できる体制を整えるという。
特に地方で慢性化する点検業務の人材不足にも対応するため、経験豊富な技術者が多数いることを生かした技術指導も進める。点検業務の経験や実績が少ない元請け企業と共同し、一緒に作業しながら技術者の教育や実地研修に取り組むことも計画。各地の点検業務を地場の業者が受注できる体制につなげていきたい考えだ。
さらに、道建設部が土砂災害警戒区域の指定に必要な基礎調査の発注に、特定共同体を活用することを検討していることを踏まえ、基礎調査の履行実績がある業者が少ないという実態にも対応していく。2月に起きた飲食店の看板落下事故も受けて民間の調査需要にも応じる構えだ。受注に向けた営業活動は既にスタートさせている。
吉岡事務局長は「工程管理を効率化し、計画的に作業ができるのがメリット。加入各社も安定して仕事を得られ、経営安定化も期待できる」と話している。