道内で牛舎新築・改修が急増-最新機器導入などで生産力増強

2015年10月22日 19時23分

 牛舎の新築や改修が、道内で相次いでいる。2015年度は、国の畜産競争力強化整備事業を活用したものだけで約50棟。事業主体となる農協や畜産農家らで組織する畜産クラスター協議会では、離農による労働力不足や環太平洋連携協定(TPP)の影響をにらみ、乳牛の頭数増強に加え、最新鋭の搾乳ロボットを導入するなど、生乳生産の拡大を目指している。

 農林水産省の調べによると、15年の道内乳用牛の飼養戸数は前年比3.2%減の6680戸、頭数は0.4%減の79万2400頭とともに減少。生乳生産量も、離農や配合飼料価格の高止まりなどで、14年度は前年度比0.7%減の382万㌧にとどまっている。

 こうした中、国は畜産クラスター協議会が実施する施設整備などの事業費の半分以内を補助する畜産競争力強化整備事業を14年度補正予算で創設。個人の畜産農家はこれまで、施設整備に関する国の補助を受けるのが難しかったが、法人化などを要件に個人の経営体でも対象となり、容易に営農強化が可能となった。

 道によると、15年度の予算は14年度繰り越し補正、当初分合わせて国費ベースで40億1500万円、事業費ベースでは94億9800万円を計上。道内にある99協議会のうち、全道組織の北海道新規就農畜産協議会を含め39協議会の事業を採択した。

 施設整備の主な内容は、牛舎整備をメーンにバンカーサイロや搾乳ロボットの設置など。15年度の工事について道の担当者は「9割程度の契約を終え着工している」と話している。

 各協議会では、離農による生乳出荷戸数の減少や労働不足を食い止めるため、牛舎の拡張を図るなどの策を講じている。

 陸別町の協議会では、酪農家3戸が法人ユニバースを設立し、延べ約7000m²の牛舎を新築。約500頭の牛を受け入れることにしている。

 さらに、オランダ製の最新鋭搾乳ロボットを6台導入し、約400頭の搾乳を進める。24時間自動化に加え、牛にセンサーを付けて搾乳管理ができるなど、省力化にもつなげる考え。年間4500㌧の生産を目指す。

 新得町の協議会では、酪農家らの出資による法人シントクアユミルクを設立。フリーストール牛舎や哺育舎、育成舎など全5棟を建設し、約500頭を飼育する。人材育成に向けた研修も充実させる予定で、担い手確保にも力を入れる。

 同協議会の関係者は「まずは生乳の生産力を向上させ、いずれ6次化産業の流れで加工品も展開の一つとして考えていきたい」と話す。

 道東あさひ畜産クラスター協議会は、根室市と別海町の各酪農家が牛舎11棟を建設し、加工乳の生産を重点に展開する。

 協議会の一員であるJA道東あさひの担当者は「離農により土地が余ってきている状態。TPPの影響も無視できないので、酪農の再編が急務」と述べ、今後、搾乳ロボットを増やしながら、生産力の向上を図る構えだ。


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