変化の激しい事業環境を象徴するように、多くの新しい言葉がことしの紙面を飾った。新ビジネスが期待される「ドローン」「ビッグデータ/IoT」、電力小売り自由化で一般化する「HEMS(ヘムス)」、運用が始まる「マイナンバー」や義務化された「ストレスチェック」―。登場の増えたこれらの言葉から、新年につながるトレンドを振り返る。
■ドローン
機器の高性能・低価格化で、誰でも簡単に無人機を飛ばせる時代になった。UAVとも呼ばれるが、自律型無人機の総称「ドローン」が定着。空の産業革命をもたらすとして、広い分野で用途開発が活発化した。
建設業では上空からの測量や計測、撮影による現地把握や3次元計測で利用研究が盛んだ。手軽に空を活用できるため、道内建設会社の間でも1機数十万円前後に低価格化したマルチコプター型が急速に普及した。
一方、4月には首相官邸屋上にドローンが墜落する事件が発生。墜落報道が相次ぎ、安全面がクローズアップされた。ルール作りの機運が高まり、12月10日には、安全な運用を定めた改正航空法が施行。その後、北海道開発局が利用ガイドラインを示すなど各分野で活用の枠組みは整いつつあり、新年は利活用範囲の広がりと、市場拡大が期待される。
■ビッグデータ
総務省の情報通信白書によると、ICT(情報通信技術)の進展で生成、集積、蓄積が簡単になった多種多量のデータを「ビッグデータ」とする。この複雑で膨大なデータを活用し異変察知、近未来予測などを新サービスにつなげる動きが活発化している。
通信機器の小型化でセンサーが直接、通信網を介してデータを発信できるようになり、こうした環境は「IoT(モノのインターネット)」と呼ばれ、ビッグデータを支える。
4月には政府がビッグデータを地方創生に役立てるため地域経済分析システム(リーサス)を公開。地方や企業の活用基盤が整ってきた。生産性を高めるため、ものづくり産業ではロボット技術とともに、活用に重点が置かれる。
インフラ分野への活用提案も目立ち、IoTを使い集めたビッグデータが24時間休まず働く道路や上下水道など、インフラの効率管理に使われる時代は、すぐそこにある。
■マイナンバー
経営上の大きなトピックだったのがマイナンバー制度。帝国データバンクが10月に実施した調査では、道内企業の9割が制度に未対応である実態が浮かび上がり、多くの企業が来年1月から始まる制度への対応に追われている。この1年、各地の建設協会や団体、商社らは制度をテーマとしたセミナーを相次いで開き、早期対応を呼び掛けた。
マイナンバーは特定個人情報に定められ、漏えいは罰則対象となる。企業にとっては徹底した管理が求められるが、事務作業の負担も増す。
これをビジネスチャンスと捉え、安全なマイナンバーの収集や管理を掲げる保守サービスが急増した。個人番号は今後、金融や医療など幅広い分野での利活用が検討されていて、セキュリティーのみならず、マイナンバーを活用した新たなビジネス、市場形成の動向も注目分野となる。
■ストレスチェック
労働者50人以上の事業所で年1回の実施が12月から義務付けられたストレスチェック制度も見逃せない話題だ。
ストレスチェックのサービスを展開する札幌のソフトウエア開発会社では「大手企業は義務化ですぐに対応が見込まれるが、中小企業側は遅れそうだ」と指摘し、対応への支援も一つの市場となりそう。一方、チェック実施の本格化で、判明したストレスへの対応や健康管理など企業側の対策に関心が高まるとみられる。
■HEMS(ヘムス)
来年4月1日からの電力小売り全面自由化に向け、各電機メーカーによるホームエネルギー管理システム(HEMS)のPRも目立った。
一般住宅で自由化のメリットを生かすために消費電力の無駄を一層きめ細かに把握する技術として期待される。空調、照明といった各用途や、時間軸も加えた電力使用量を円滑に把握し、消費者に見える化する。
これから本格的な普及が期待されるネットゼロエネルギーハウス(ZEH)を支える技術として、来年以降も注目されそうだ。