15年度の道内企業立地は過去最多104件-リスク分散目的続く

2016年05月31日 19時08分

 2015年度の道内企業立地件数が前年度比17件増の104件に上り、07年度の統計開始以降で最多となったことが、道経済部のまとめで分かった。リスク分散を目的とした立地が続いているほか、地方へのIT開発拠点やコールセンターの立地、物流関連施設の整備など新しい動きが出ている。北海道新幹線開業を見越した道南への投資も顕著になっている。

 5月31日に札幌ガーデンパレスで開かれた北海道企業誘致推進会議の16年度総会で、同部が報告した。件数は新設と増設の合計で、年度は立地表明時期でカウントしている。

 15年度は統計開始以降初の3桁となる104件で、08年のリーマンショックに伴う景気低迷の影響で落ち込んだ企業立地件数は、09年度の44件を底に6年連続で増加している。

 15年度の業種内訳は、製造業が15件増の76件、産業支援サービス業が3件増の14件、倉庫業などその他が1件減の14件となった。新設は10件増の35件、増設は7件増の69件。道外企業は10件増の59件、道内企業は7件増の45件だった。

 リスク分散を理由とした立地は3件増の26件で、東日本大震災後の11年度以降で最も多かった。荻窪金型製作所(本社・長野県池田町)が苫小牧市内に設ける自動車部品の金型生産拠点や、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社、本社・米国コロンバス)が4月に開所した札幌システム開発オフィスなどがこれに該当。従来の自然災害リスクに加え、人件費高騰や円安による海外リスクを背景にした立地があるなど、リスク分散の要因は多様化している。

 士幌町農業協同組合が町内に建設するポテトスナック製造工場や、きのとや(本社・札幌)の関連会社であるBAKE(同)が札幌市内に新築する洋菓子製造工場など、食関連産業の立地は統計開始以降最多の37件で4件増えた。

 本道の良質な食資源や北海道ブランドの活用を狙う企業が、鮮度保持技術の進化などによって、消費地から生産地に工場をシフトする資源型立地の動きが見られる。また、インバウンド(訪日外国人観光客)による土産用菓子の需要拡大、道産機能性素材への注目の高まりなども背景にある。

 新たな動きも出ている。クレアンスメアード(本社・東京)が函館市にIT開発拠点を設置したり、日本コンセントリクス(同)が旭川市にコールセンターを設けるなど、企業立地が多かった石狩、胆振以外への立地が目立つ。首都圏の人手が不足していることから、進出企業は地方の良質な人材に着目している。石狩、胆振以外への立地は、15年度に6件増の53件と半数以上を占めた。

 北広島市の日本梱包運輸倉庫(本社・東京)や芽室町の横浜冷凍(同・横浜)など、物流関連施設の立地は4年連続で増え、15年度は初の2桁となる11件に上った。物流の高度化・効率化に対応した物流施設の需要増大に加え、国がトラック運転者の労働時間に関する基準を厳格化したことで、物流拠点が必要になっていると道経済部は見ている。

 産業・医療機器制御システムのアサヒ(本社・東京)が函館市に北海道・東北エリアの拠点工場を設けるなど、道南に食品工場増設やIT拠点設置、製造業の進出があり、北海道新幹線の開業を見越した投資が顕在化している。

 この日の会合では、ものづくり産業、食関連産業、健康・医療産業、データセンター、オフィスをターゲットに、関係機関・団体が16年度の企業誘致活動を一体的に展開することを決定。

 道の阿部啓二経済部長は「熊本地震で自動車関連企業が被災し、サプライチェーンへの影響が続いている。生産体制分散化の動きが今後強まるのでは。北海道がリスク分散の適地であることをさらにPRしていく」と述べ、国内シェアの高い製品を一つの拠点で生産している企業に特に強く働き掛ける考えを示した。


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