女性がもっと活躍できるように―。中山組(本社・札幌市東区)は2016年度、現場に女性技術者を初めて投入した。安全・ISO部主任の本庄千明さんだ。勤続20年以上だが現場経験はなく、営業や総務などを担当してきた。安全管理の経験が買われての配置となり、「毎日が勉強」と奮闘する本庄さんを訪ねた。(建設・行政部 福本 優香記者)
同社は3月、札幌開建の女性活用モデル工事である石狩川改修東の里遊水地排水門盛り土ほかを3億4921万円で落札した。工期は4月1日から17年1月13日まで。監理技術者、現場代理人、担当技術者のいずれかに女性を配置することが参加要件となっていた。
担当技術者としての本庄さんの業務はこれまでの経験を生かし、安全日誌を含む安全書類のチェック、定点写真撮影、現場点検など主に安全関係。慣れない写真撮影に苦戦しつつ、安全日誌では「最初は的外れなことを書いていたみたい」と苦笑い。しかし、入社2年目の後輩も「上司」として、助言を求めてきた。今では「自分の提案がそのまま採用されることも増えた。その日の作業内容もつかめるようになり、今後の工事の進み具合が楽しみになった」と手応えを感じている。
しかし「男性と同じようには働けないし、できないこともある。もっと先読みした深い安全対策などを考えられるようになりたいが、実際に現場で培った経験にはかなわない」とジレンマを明かす。
現場所長を務める木嶋義彰土木事業部工事課長は「現場では女性事務員の配置もめったにない中で不安はあった。でも、何より本人がどんどん仕事を買って出てくれるし、書類作業の負担も減って助かっている」と評価する。
家庭と仕事の両立に向け、現場としても通勤時間倍増の負担を軽減するために就業時間を調整しているほか、専用トイレも設置。本庄さんは「さまざまな部分の配慮に申し訳ないという気持ちもある」一方、「女性技術者がもっと現場に入り、安心して現場で活躍できるようになれば」と後輩の活躍に期待を寄せている。