苫小牧港西港区西ふ頭のマイナス9m耐震強化岸壁整備事業がこのほど、全日本建設技術協会の2015年度全建賞に選ばれた。地震発生時の物流拠点機能維持が可能になったことや、火力発電所から発生する石炭灰の利用で建設コストの3割縮減に成功したことなどが評価されたもの。事業を所管する室蘭開建苫小牧港湾事務所にとっては、11年度の苫小牧東港区マイナス12m耐震強化岸壁整備以来の受賞となる。
西港区の西ふ頭はRORO船航路の拠点で重要な役割を担うが、完成から50年以上が経過して老朽化が進行。施設倒壊が懸念されていたほか、岸壁のすぐ背後には上屋があるため、トレーラーの旋回や自動車の積み降ろしに支障を来していた。
そこで老朽化したふ頭をRORO船対応岸壁として改良し、上屋を撤去。併せて災害発生時の緊急物資など輸送拠点機能の確保に向けて耐震強化も図ろうと、11年度に西港区マイナス9m耐震岸壁強化整備を事業化した。4バース分ある岸壁を1―3号までの3バースに再編。これまで2、3号岸壁の整備を終えている。
評価対象となった3号岸壁の整備では、地盤改良に当たり、港に隣接する火力発電所で発生する石炭灰を有効利用し、コストを削減。上屋の撤去や耐震強化により、荷役の効率性と安全性が大きく向上した。
別所博幸所長は「RORO船は、北海道の物流に重要な役割を担っている。岸壁の再整備で物流の効率化につなげていきたい」と事業の意義を説明。受賞に関しては「コスト削減や老朽化への対策などが総合的に評価された結果だと考えている。今後ともさらなるコスト削減をしつつ、施設整備に取り組みたい」と話している。