世界の自動車メーカーなどが実現を目指す自動運転技術。道内にも、この技術を支える可能性を持った研究に取り組む大学や高専が存在する。積雪寒冷な環境と広い敷地を生かし自動車やタイヤ、ブレーキなど28のテストコースが立地することもあり、北海道を自動運転の開発拠点にしようという動きが活発化している。このほど札幌市内で開かれた研究発表会では、関連する先端技術の成果披露で、これを後押しした。
「共同研究発掘フェア」と題した研究発表会は7月下旬に開催。北見工大、はこだて未来大、道科学大、道科学大短大、北大、室蘭工大、旭川高専、函館高専と道が主催した。
北洋銀行の展示商談会「ものづくりテクノフェア2016」に合わせて開き、12件の成果披露に合わせ、企業側からの経営的な視点を持った提案を求めるなど、共同研究への道筋を探った。
周囲360度の人を認識できるシステム、単眼カメラと照明を組み合わせた距離計測技術、電波と非接触式センサーを使い暴風雪の悪視界で車両を安全に誘導する仕組みなど、空間や状況の認識に関する研究が多く報告された。
バスとタクシーを統合し経路とダイヤを自由に予約できる、完全自動リアルタイムフルデマンド交通システム、寒冷地に適した1人乗りの電気自動車開発など、自動運転の利用システムや製品化につながる取り組みも披露した。
工学系にとどまらず、北大大学院文学研究科心理システム科学講座の河原純一郎特任准教授は、人の認知行動特性を分類し、少ないサンプル数で有効な被験者実験を可能にする手法を提案した。
無作為テストは多くのサンプルが必要で、時間やコストが掛かるが「平均値を結果として採用するが、うまくいかないケースがある」と指摘。
そこで、人の行動に至るまでの認識の違いに着目。行動要因を探る上で、運転などテーマを明確にして製品利用など認知の特性で分類すれば、サンプルに重み付けして効果的なデータ収集が可能になると論じた。
道は6月、これら豊富なシーズ研究やテストコースなど地域のポテンシャルを生かし、自動車産業の集積と、自動運転の開発拠点を目指す活動として、関連産業や研究機関を交え、北海道自動車安全技術検討会議を設置した。
道経済部産業課の三橋剛課長は、自動走行実証試験のアンケート結果を示した上で、複数の関係機関で事務手続きが必要になる公道実証について、事前連絡の窓口を一本化するなど、円滑な実証、開発環境の整備に取り組むことを強調した。