函館労基署管内の2016年労災発生状況(速報値)で、建設業がデータのある1967年以降初となる死亡災害ゼロを達成した。労基署や発注機関、建設関連団体が連携してパトロールや各種研修を充実させるなど、業界を挙げた取り組みが結実。建災防函館分会の分会長も務める函館建設業協会の森川基嗣会長は「3Kのイメージが払拭(ふっしょく)され、魅力ある産業として認知される契機になれば」と期待している。
速報値段階では、12月にその他運輸でロープウエーの点検清掃中に滑車部分と器具の隙間に挟まれて1人が死亡したが、全産業合計は年間でこの1人にとどまり、07、10年の4人を大きく下回る過去最少を記録した。
建設業では、73年が過去最悪の23人に上り、76年から4年間は10人が続いた。それ以降は94年の11人を除き、一桁で推移。07年からは5年連続で1人をキープしていたが12年から多発傾向に転じ、15年は函館開建発注現場で相次いで死亡事故が発生した。
そんな中で、労基署と発注機関、建災防函館・江差両分会らは連携して安全活動を強化。労基署は建設業向けのA4判リーフレットを作り、各災防協や発注者へ毎月送付。パトロールは前年の17回から37回、集団指導等は8回から21回と充実を図った。
パトロールでは重機の作業計画や足場に関する打ち合わせ記録などの好事例を公表して共有化。店社の事前パトロール結果添付も求めた。函館開建監督員の安全施工研修開催を含め、関係者全体で安全を考えた。
山谷幸雄署長は「発注機関、団体が熱心に取り組んだことが大きい」と評価。「どんな場面でも人命を失うことは避けなければ。死亡災の割合が高い業種だが、この良い流れを保てるよう連携を強める」と話す。
函館開建の菊池一雄部長は「昨年は天候不順が多く厳しい環境だったが、現場に関わる全従事者への意識付けとその持続が徹底されたことが大きい」とした。
森川会長も「成果を継続できるよう、関係者一丸となって、より有効な活動を展開していく」と先を見据えている。