土木学会道支部が16年度技術賞に北の峰トンネルなど3件

2017年04月10日 19時07分

 土木学会北海道支部(清水康行支部長)は10日、2016年度技術賞を発表した。受賞したのは「旭川十勝道路富良野道路北の峰トンネル(仮称)」と「寒冷地における国内最大級の地上式PCLNGタンク(主要土木工事)の設計・施工(石狩湾新港発電所1号機新設工事石狩LNG基地No.3貯槽)」「樽前山直轄火山砂防事業苫小牧川遊砂地」の3件。21日に開く総会で表彰する。

 この技術賞は、1977年に創設。最先端の土木技術や革新的な工法を導入した現場を顕彰している。

 また、地域活動賞にはNPO法人十勝多自然ネットと標茶高を選出。十勝多自然ネットは1998年から「人と自然の共生」をテーマに、河川で生物多様性や生態系の保全、復元を目指した活動を展開。16年8月の大規模な出水後には、被害に遭った河川敷の基盤整正や流木処理などを主体的に実施した。

 国際文化教育に熱心な標茶高は、外国人クルーズ観光客へのおもてなし活動に15年度から参加。英語での道案内のほか、全天候型緑地で書道や着物の着付けなどを通じた英語によるおもてなし活動を行っている。

 ■旭川十勝道路富良野道路北の峰トンネル(旭川開建)

 本トンネルは複雑な地質構成であることから周辺水文環境への影響や施工時の安定性に配慮した施工が求められた。トンネル掘削による地下水位低下を極力抑えるため、全国的に施工例が少ないウオータータイト構造(非排水構造)を採用し、高度な技術とさまざまな創意工夫を用いて施工した。

 ウオータータイト構造と止水注入工の採用により、トンネル掘削中は周辺の井戸や河川でトンネル掘削の影響(水位)を想定通り抑制することができた。施工完了後は、トンネル周辺で観測していた水位観測孔を利用して水位回復を観測している。

 ■寒冷地における国内最大級の地上式PCLNGタンク(主要土木工事)の設計・施工(石狩湾新港発電所1号機新設工事石狩LNG基地No.3貯槽)(北電)

 当該地点は、地上式PCLNGタンクの建設地の中で国内最北に位置し、寒冷地という厳しい自然条件の下、地上式PCLNGタンクのコンクリートに求められる性能を満足しつつ、経済的な設計と高品質な施工を実現した。

 No.3貯槽では、地上式PCLNGタンクの高いコンクリートの要求性能(ひび割れを許容しない等)への対応や、石炭灰の有効利用といった環境保全の観点から、基礎版・防液堤コンクリート全ての混和材としてフライアッシュ(苫東厚真発電所産JISⅡ種・セメント内割30%)を採用していて、これは同種工事では国内で初めての事例。

 フライアッシュの採用では、ひび割れ抑制や耐久性向上効果に着目した事前配合試験を重ね、要求性能を満足することを確認するとともに、断熱温度上昇試験や自己収縮試験などの実施により温度特性や硬化特性を明らかにするなど、今後の同種工事へのフライアッシュ適用拡大の道筋も示した。

 基礎版コンクリートは、品質確保の観点から近郊のプラント7社から約1万m³に及ぶ生コンの供給を受け、一昼夜(約24時間)かけて連続打設を行っている。その打設では、予備の生コン打設機材を配置することや生コン資材の供給管理体制の構築など万全のリスク回避策を講じた上で、道内過去最大規模のコンクリート連続打設を延べ約600人を要して実現している。

 基礎版・防液堤コンクリートの設計では、液密性確保の観点から常時性能として外気による温度応力も考慮したひび割れ照査が必要。寒冷地での建設となる当該地点の照査は、既往地点の中で最も厳しいものとなったが、その中においても防液堤下端部に鉛直テンドンとPC鋼棒を併用することでPC鋼材量の低減を可能にするなどの経済設計を実現している。

 ■樽前山直轄火山砂防事業苫小牧川遊砂地(室蘭開建)

 苫小牧川遊砂地は06年度から16年度にかけて整備された砂防設備で、苫小牧川で発生すると考えられる融雪型火山泥流量268万m³(計画泥流量)をこれ1基で捕捉することができる堤長1074mの砂防設備。

 苫小牧川での砂防設備配置については、下流域に広がっている低平な湿地帯に配置することで1基の砂防設備による計画泥流量の全量捕捉を可能としており、加えて湿地帯の軟弱な基礎地盤上での砂防設備形式では、事業区域内の他の渓流で広く用いられているセル形式やダブルウォール形式ではなく、土堤形式を選定することで最下流部での砂防設備整備を可能としている。

 苫小牧川遊砂地は、軟弱な基礎地盤上での整備となることから、沈下に対する対応が可能な土堤形式としている。基礎地盤での地盤改良などの必要がなく、土を材料としているので施工時のコスト縮減が図れ、長期的に発生する可能性のある沈下などに対しても補足盛り土による対応が可能であるなどライフサイクルコストの縮減も目指している。

 また、地震時の液状化対策として鋼矢板を施工しているが、地下水の移動を遮断させない対策として、鋼矢板には通水機能を持たせた排水機能付き鋼矢板を施工することで環境への調和を図っている。


関連キーワード: 土木 新技術

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 東宏
  • 川崎建設
  • 北海道水替事業協同組合

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,396)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,289)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,258)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,101)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (920)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。