室蘭市は、ITを活用した道路舗装損傷自動抽出システムの実用化に取り組んでいる。東大や同市を含む5自治体が共同で進めるマイシティレポートの開発・実証実験の一環で、2018年度までの本格運用を目指す。
マイシティレポートは、東大を主体に研究・開発を進めている機械学習やIoTの機能などを組み込んだ、次世代型の市民協働型プラットホーム。全国自治体への展開を目指しており、東大や民間企業のほか、千葉市、室蘭市など5自治体が参画。18年度末までを実証実験期間としている。
今回のレポートのベースとなるのが、千葉市が運営する「ちばレポ(千葉市民協働レポート)」。道路の損傷など身近な地域の課題を、スマートフォンやパソコンで市民が投稿することで市民と市役所、市民と市民の間で課題を共有し、合理的、効率的に解決。市民と行政の新しいチャネルとなるほか、市民と行政の協働の機会を設け、行政運営の効率化を図ることにつながっている。
マイシティレポート実現時には「ちばレポ」の機能を盛り込んだ5機能を提供。「ちばレポ」以外の新機能として、IoTや機械学習を用いた道路舗装損傷の自動抽出システム、地域課題の解決に必要な資源の最適化を達成する機能を加える意向だ。
道路舗装損傷自動抽出システムでは、車載カメラによる実証実験を実施。具体的には、専用のアプリケーションをダウンロードとしたスマートフォンを車に搭載し、損傷した道路面の画像を一定間隔で撮影して自動で学習用サーバーに送信。サーバー側は蓄積される写真のパターンを自動で学習し、認識度の向上を図る。
室蘭市の市道総延長は約440㌔。維持、管理費、草刈り、剪定(せんてい)などの維持補修費として約2億円を措置する。アスファルト内部に雪解け水などが入り込み、水が凍結・膨張を繰り返した結果、ひび割れや隙間ができ、表層舗装が剥がれてポットホールと呼ばれる穴が生じる。市はその都度調査し、パッチを当てるなどの補修を施している。
16年度には「穴が空いている」など800件ほどの情報提供を受け、パトロール中に発見した分も含め合計1200カ所を補修。タイヤがパンクしたといった事例には損害賠償するケースもあり、毎年かさむ費用は市にとって悩みの種となっており、同システムの実用化に期待する。
1回目の実証実験では、補修が必要な箇所の認識率が70%、2回目は90%まで精度を上げた。市では「実用化すれば現地で職員が調査する手間がなくなり、費用も削減。職員の負担をカバーできる」と期待。一方、「精度がどれくらい上がるかが課題」と話している。