女性だけでなく、男性にとっても大きな課題となってくるのがワークライフバランスの問題だ。建築部の高橋麻弥子さん(26歳)は「やっぱり何歳で結婚したいとかそういうビジョンはある」と話す。
しかし彼女たちは「現場と家庭の両立はできないでのはないかと思う」と口をそろえる。現場では4週5休が定着しつつあるが、それでも現場に出れば朝が早い。帰りも遅いため、そこから家事や育児に取り組むのは困難ではないかという意見だ。
深堀こなみさんも「例えば子どもが熱を出したときに早退ができるのか、それは不安」、山本寛子さんは「土曜日も仕事があり、子どもとの時間が取れないのではないか。それに旦那さんが転勤族だったら、と考えてしまう」と話す。
土木部の渕瀬かおりさん(41歳)は、「結婚や妊娠、出産などライフイベントを考えると、例えば内勤と外勤を行ったり来たりできるような柔軟な働き方が必要だと思う。でもそれは女性に限ったことではなく、男性にとっても必要な働き方」と断言する。
砂子組では、情報化施工やBIM、CIMの取り組みに力を入れている。特に情報化施工では、大型土木工事の現場だけでなく、民間の建築現場でも試験的に導入を開始。砂子邦弘社長は、これら人手不足に対応した施工支援技術について「若い人が興味を持ち現場で活躍できる分野」と考えている。こうした社内的な取り組みは将来的に女性技術者の定着にもつながりそうだ。
同社はことし、女性技術者のチームを発足させ、現場見学会や勉強会、交流会などを開催している。この取り組みを通じ、現場内の整理整頓や効率の良い仕事の方法など、女性ならではの視点で現場を見て意見を出し、それを社内にフィードバックさせることで、社内全体の仕事の効率化などにつなげていきたいとしている。
また、業界全体への要望としては「妊娠や出産への心からの理解が必要。その安心感は長く働く上で重要になる」(近藤美都子さん)、「長く働くと男性の部下や、役所などへの対応が出てくると思うが、そのときに男女の違いで見られるのではないかと思うことがある」(一二三北路建築部・平塚友紀さん、18歳)、「今は現場に女性トイレを設置できる箇所が限られているので現場に出られていない。早く現場に出たい」(建築部、近江愛菜さん、22歳)といった声を上げている。
建設業界はいま、女性の〝進出〟から〝定着〟へとかじが切り替わりつつある。この取材の中で最年少の平塚さんは「絶対に建設業で働きたかった」と断言していたが、3K、5Kともいわれる建設業界で、幼いころから建設業に憧れを持っていた人たちにとっては、そんなことは関係ない。希望を持った若者が業界に入ってきたときに大きなギャップを感じたり、仕事へのモチベーションが下がらないような環境を整えることが重要だ。