北海道ゴム工業所(本社・由仁)は、主力の電気融雪マットを展示した。1000×1500㍉で日本価格は約6万円。現地代理店では関税と消費税がそれぞれ18%、さらに輸送費が上乗せされる。長沢嘉樹専務は「漏電しにくい点や、紫外線に強く長寿命な点などもアピールしたいが、お客さんの関心がまだそこまで追い付いていない」。値段や製品そのものの珍しさが目を引く中、価格を裏付ける機能性を伝えるのは難しい。
日東建設(本社・雄武)は、非破壊でコンクリートの圧縮強度が推定できるコンクリートテスターを持ち込んだ。米国、東南アジア、ナイジェリアなど温暖な地域で既に市場展開する一方、寒冷地は未進出だ。本道同様に凍害などのダメージが大きいロシアの市場調査を目的に参加した。
街の様子を見た技術開発部の岡本真さんは「地震が少ない地域だからか、建設工事現場では柱こそコンクリートだが壁はれんがが多い」と気が付いた。ロシアでは建物の維持管理の法整備が進んでいないため、管理者が自主的に検査する程度。コンクリート製品の品質管理で需要は見込めるが、工事でニーズを見極めるのは厳しいとみる。
■ロシア企業も高断熱性能PR
ロシアの出展企業の様子もうかがってみた。ノボシビルスク州にある国内大手セメント会社「イスキチムセメント」は、1934年設立。従業員数は約1000人で、自社で原料産地を保有し、現場への輸送まで一貫して担っている。ロシアの国家基準に適応した高品質なセメントは年間約210万㌧出荷される。
窓やドアのプロファイルメーカーでは、独自開発のプラスチック素材で、ロシアの国家基準であるマイナス20度を大きく上回るマイナス30度の高断熱性能を実現。意匠性に優れ、紫外線にも強いその耐用年数は驚きの60年。
ある建材メーカーでは、ガラス素材の心棒に強化プラスチックを組み合わせた、土留めや型枠用の支保工を見つけた。強度はスチールの2倍で重さは4分の1。もちろん腐食しない。ロシア全土とヨーロッパで扱っている。
強化プラスチックでできた支保工
■直行便就航で視察が容易に
今回シブビルドに出展した174社のうち、日本企業の出展はカタログやサンプル展示も合わせて17社。展示会主催者は、「国外からの参加者の8割を日本企業が占めたことは、展示会の一つの大きな特長になった。準備段階から日本企業への問い合わせがあり、期待度の高さがうかがえた」と話し、今後も継続的な出展を求めている。
2年連続での出展は、行政や関係者の後押しも大きい。日本貿易振興機構(ジェトロ)と経済産業省は中小企業海外市場開拓事業として展示会出展費を支援し、ロシア向けビジネスのFECマネージメント(本社・札幌)が通訳や出展コーディネートを担った。
開催期間中は北海道経済産業局や札幌市、旭川市が応援に駆け付けた。ノボシビルスク市と姉妹都市提携を結ぶ札幌市は、両市共催のレセプションを開き、約50人の市民を前に各社が技術をアピールする場を設けた。
札幌市とノボシビルスク市が共催したレセプションの様子
6月から成田とノボシビルスクを結ぶ直行便の就航が始まる。商売には不利なルーブル安が続くが、渡航費は安く、市場視察には最適な時期だ。ビジネス・フロンティアになり得るか、現地に足を運んで確かめてほしい。