年配の方はご存じだろう。SPやLPのアナログ音楽レコードは誤って引っかいたり、落として傷付けたりすると音が飛ぶようになってしまうことがよくあった
▼樹脂盤に音楽情報が刻まれていたため溝が破損すると一巻の終わり。例えばザ・ピーナッツの『恋のフーガ』なら、「追いかけて 追いかけて」プツッ「追いかけて 追いかけて」プツッ、と延々追い駆けてばかりでどこにもたどり着けなくなるのである。ところで国会、中でも野党の大部分もアナログなのか、このところよく音が飛ぶ。「疑惑は深まった」プツッ「疑惑は深まった」プツッ「疑惑は深まった」…。話題は替わっても出てくる言葉はいつも同じ。しかも不思議なことに、深まっても深まっても確たるものにはまるで突き当たらないらしい
▼きのうの衆院予算委員会集中審議も質疑の中心は学校法人「加計学園」問題だったが、質問した野党議員によると、先週の柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致でもさらに「疑惑は深まった」そうだ。そもそも愛媛県職員のメモで分かる通り、柳瀬氏との面会時には「構造改革」と「国家戦略」どちらの特区を使うか入口論に終始していた。さらに獣医学部新設は文科省大学設置審議会が基準に則って審査し認可している
▼柳瀬氏の「官邸で会った記憶はない」との発言がいくらお粗末でも、首相が加計側に便宜を図った証拠にはならないのである。何かにつけ政権の「疑惑は深まった」として、国政の重要課題を後回しにする野党の戦略はもう限界だろう。壊れたレコードを聞くのもうんざりだ。